山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授
1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
色あせかけている県民投票。市民と権力のせめぎ合いの行方は……
実は、「辺野古」県民投票の会が署名活動を始めた当初、辺野古の工事に反対して座り込む人々や市民団体、政党、県内の識者の大多数は、県民投票の意義を疑問視していた。だが、地位や権力、金とは無縁な若者たちが、懸命に署名を集める姿は、しだいに多くの県民の心を動かしていく。団体や政党の協力の輪も広がり、7月末までの2ヵ月間に、メディアの事前の予想をはるかに超える、有効・無効合わせて10万筆以上の署名が集まった。
県民投票の署名活動に尽力した若者たちは、突然の知事選でも、デニー氏の選挙活動を支えた。彼/彼女らの活動がデニー氏の大勝を支えたのは間違いない。その姿に、多くの大人が民主主義や市民運動の新たな可能性を見いだした。
だが、若者たちが普天間移設問題にもたらしたこうした「光」は、まもなく色あせていく。安倍政権が11月1日、選挙期間の約2ヵ月中止していた埋め立て工事を再開したからである。これは翁長前知事が7月27日に表明した辺野古埋め立て承認の撤回について、効力停止を決定したのと同時に行われている。
謝花喜一郎副知事は、「翁長知事が本当に命がけでやったものを、このようにいとも簡単に数ページで決定がなされることに、沖縄県民は本当に怒っております」と、東京の野党合同ヒアリングの場で訴えた。