伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国カルチャー──隣人の素顔と現在』(集英社新書)、『韓国 現地からの報告──セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)など、訳書に『搾取都市、ソウル──韓国最底辺住宅街の人びと』(イ・ヘミ著、筑摩書房)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
最近の日韓関係でちょっと心配なことがある、と言うと、「徴用工判決ですね。韓国の大統領府も相変わらず無言ですし……」などと言われる。
もちろん、それもある。原告の弁護士さんをはじめ、識者の皆さんの意見にはなるほどと思うのだが、解決方法となると、皆目見当がつかない。韓国の与党「共に民主党」からは、「日本と韓国両国の政府、企業で『2プラス2人権財団』を設ける案」が出されているが、それを両国の国民がすんなり受け入れるとはとても思えない。
ところで今とても心配しているのは、その「解決方法」よりも日韓の一般の人々の感情だ。特に最近感じるのは、韓国人の日本に対する見方が微妙に変化していること。それは「嫌日」とでも呼べばいいのだろうか。日本人の一部が主張する「反日」とは別のものである。「呆れる」とか「うんざり」という感情。かれこれ30年ほど韓国人とつきあってきたが、最近になってとみに感じるようになった。特に、私たちの近くにいる、「日本派」と言われる人々の間で、それが急速に広がっているように感じる。
例えば、日本で働いている韓国人の若い友人(20代・女性)が、先日こんなことを言っていた。
「韓国にいる友だちから、日本にいていいなあ、羨ましいと言われることが多いんです。日本人は親切だし、日本の食事は美味しいでしょう?と。前は素直にそうだよ!って言えたんだけど、なんだか、最近は複雑。日本に住んだことのない韓国人の方が、日本に対して良いイメージを持ってるような気がします」
さらにツイッターでは、若い韓国女性が日本語でこうつぶやいていた。
「ここ(ツイッター)で韓国の悪口言っている人がどれだけひどいか。韓国にも悪いところがあるから批判はしてもいいけど、私が何か言うたびに、韓国に帰れ帰れって。言われなくても帰ってやるよ」
「今は、日本語ができる韓国人の方が、日本に対するイメージが圧倒的に悪い気がする」
日本語ができる韓国人、つまり日本に関心のある人の方が、日本に対して否定的な感情をもつようになっている。悲しいことだ。以前は、逆だったのだ。日本語ができる人が日本に親近感を持ち、日本人に味方をしてくれた。
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