冨名腰隆(ふなこし・たかし) 朝日新聞記者 中国総局員
1977年、大阪府生まれ。同志社大学法学部卒。2000年、朝日新聞入社。静岡、新潟総局を経て2005年に政治部。首相官邸、自民党、公明党、民主党、外務省などを担当。2016年に上海支局長、2018年より中国総局員。共著に「小泉純一郎、最後の闘い ただちに『原発ゼロ』へ!」(筑摩書房)
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
習近平が出席した式典の翌日、南京大虐殺記念館の展示が大幅に変わった。その狙いとは
中国には、日本との過去の戦争について重要ないくつかの日付が存在する。
例えば、日中全面戦争のきっかけとなる盧溝橋事件が起きた7月7日(1937年)、満州事変につながる柳条湖事件が発生した9月18日(1931年)などがそれに当たる。
もう一つ、12月13日も南京で旧日本軍が「40日以上にわたる大虐殺を始めた日」として重視される。2014年に「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」と法律で定められ、それまで地方レベルの開催だった追悼式典が国家レベルに格上げされた。
この年、習近平国家主席は共産党序列3位の張徳江・全国人民代表大会(全人代)常務委員長とともに出席し、演説で「歴史を顧みない態度と侵略戦争を美化する一切の言論に断固反対しなければならない」などと訴えた。
ただしその後、式典でトップを務める「顔」は一定していない。2014年から今年までを振り返ると、以下のようになる。
2014年 習近平国家主席
2015年 李建国・全人代常務副委員長
2016年 趙楽際・共産党中央組織部長
2017年 習近平国家主席
2018年 王晨・全人代常務副委員長
習氏以外は共産党最高指導部(7人)の政治局常務委員ではなく、その一つ下の政治局員だ。2017年は南京事件から80年の節目であり、習氏が3年ぶりに出席したものの登壇せず、兪正声・全国政治協商会議主席が演説を務めた。習氏が出席したにもかかわらず、一言も発さないイベントはかなり珍しい。
私はこの式典を現場で取材したが、国内向けの威信を保ちつつ、国外(日本)の反応を抑える難しい立ち回りであることを、習氏の表情から感じ取った。いずれにせよ国家行事になった初回の2014年を除けば、式典は抑制気味に開かれていると言えるだろう。