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南京大虐殺記念館長が語る「抗日」「反日」の違い

習近平が出席した式典の翌日、南京大虐殺記念館の展示が大幅に変わった。その狙いとは

冨名腰隆 朝日新聞記者 中国総局員

南京大虐殺記念館の常設展示の変化

 

拡大南京大虐殺記念館の本館へ入ると、暗い地下ホールの壁に犠牲者や生存者の顔写真が展示されている=2018年9月13日(冨名腰隆撮影)
 南京大虐殺記念館の常設展示内容が2017年12月14日から、つまり習氏が出席した追悼式典の翌日から大幅に変更されたことは、あまり知られていない。10年ぶりのリニューアルでどのように変わったのかを私は今年7月に取材し、朝日新聞デジタルの「特派員レポート」にまとめた。再掲になるが、確認できた変更点を列挙する。

(1)写真や資料の展示数が大幅に絞られた。以前は図や絵、写真などが3500枚、資料が3千件、音声・映像記録が140件あったが、写真は2千枚、資料は900件になった。資料が整理されたうえ、「事件当時のものではない」などと日本で議論を呼んだいくつかの写真はなくなっていた。
(2)「人道主義的救援」のコーナーを新設。南京安全区に残って救助活動を続けた外国人の活躍や資料を大幅に増やした。
(3)同様に、当時の様子を伝えた欧米の報道も追加、コーナーとして新設した。この点については、張建軍館長が中国メディアの取材に「第三者の公正な立場による記録が国際社会の関心を引き起こす」と語っている。
(4)日本兵に襲われた民家を再現したジオラマや、死体を模した人形などが撤去された。残虐性をあおる展示を抑制している。
(5)入り口に掲げた序文で、展示の狙いが以下のように明記された。
「本展示の趣旨は、南京大虐殺という痛ましい史実を銘記し、無辜の犠牲者を追懐するとともに、平和に発展する道を断固として歩んでいきたいという中国人民の崇高な願望を表明し、歴史を銘記し、過去を忘れず、平和を心から愛し、未来を開いていこう、という中国人民の確固とした立場を宣言する、ということにある」
(6)習近平氏のコーナーを新設。国家レベルの行事に格上げした2014年の国家追悼式典の写真や演説を展示している。
(7)以前の結びにあった「日本国内の一部の勢力が歴史を歪曲(わいきょく)し、侵略戦争を美化しようとするたくらみに対しては、警戒心を高めなければならない」などの表現を削除。新たに「歴史は歴史であり、事実は事実」「南京大虐殺事件の歴史が語っているのは、平和は勝ち取らなければならず、平和は擁護しなければならず、平和と協力は人類社会進歩の永遠のテーマだということである」などと記した。

 日中の有識者で見解の分かれる犠牲者数については、「30万人」の表記が残るものの、記録や写真を重視する実証主義的な内容が色濃くなったことは日本の外交筋も認めるところだ。こうした流れを受けて、福田康夫元首相が今年6月、記念館を訪問している。

拡大参観者は石庭を通って本館へ向かう=2018年7月8日(冨名腰隆撮影)

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筆者

冨名腰隆

冨名腰隆(ふなこし・たかし) 朝日新聞記者 中国総局員

1977年、大阪府生まれ。同志社大学法学部卒。2000年、朝日新聞入社。静岡、新潟総局を経て2005年に政治部。首相官邸、自民党、公明党、民主党、外務省などを担当。2016年に上海支局長、2018年より中国総局員。共著に「小泉純一郎、最後の闘い ただちに『原発ゼロ』へ!」(筑摩書房)

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