島田裕巳(しまだ・ひろみ) 宗教学者、作家
1953年東京生まれ。東京大学文学部宗教学宗教史学専修課程卒業、東京大学大学院人文科学研究課博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員を歴任。現在は作家、宗教学者、東京女子大学非常勤講師。著書に、『「オウム」は再び現れる』(中公新書ラクレ)、『創価学会』(新潮新書)、『日本の10大新宗教』(幻冬舎新書)など。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
けれども、日本だけではなく、世界を見回してみると、平成の時代が過ぎて行くなかで、宗教の衰退がさまざまな形で明らかになってきた。それを踏まえれば、オウム事件だけが原因だとは言えない。
日本では、新宗教の衰退が著しく、ほとんどの教団が信者数を減らしている。しかも、平成の時代に半減したところも珍しくないのだ。
「吹奏楽の甲子園」と呼ばれた普門館の解体がはじまっているが、ここは新宗教の代表、立正佼成会の建物である。
解体されるのは、老朽化し、耐震の面で問題が出てきたからだが、収容人数5000人近い建物が、この教団で不要になってきたことが大きい。解体後、再建されるということにはなっていない。
高校野球の方の甲子園で常連校になっていたPL学園の野球部が廃止されたのも、立正佼成会と並ぶ新宗教の代表、PL教団の衰退が関係している。
新宗教の信者は、高度経済成長の時代に爆発的に増えた。その後は、新たな信者を獲得できず、信者の高齢化が進んだ。亡くなる信者も多くなり、支部の統合なども進んでいる。
既成宗教も、仏教の本山や神道の本社に参拝する人の数は減りつつある。伊勢神宮の式年遷宮など、大規模なイベントがあるときには、人は集まる。しかし、普段の参拝者は減少している。地方から団体で参拝する人たちが減ったことが大きい。
はっきりと数字で示されているわけではないが、初詣でさえ参拝者は減少傾向にあるように見える。
スマホやインターネットが普及するなかで、神や仏にすがるということが意味をなさなくなってきた。何か困ったことがあれば、まずスマホを開く。そちらの方が、神や仏より、はるかに問題を解決するのに役立つのだ。
そうしたことは、日本でだけ起こっていることではない。
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