韓国で暮らす日本の子どもたちが萎縮しないために
下校した娘が聞いてきた。「日本って昔韓国に悪いことしたん?」。さて、どうする!?
藏重優姫 韓国舞踊講師、仁荷工業専門大学語学教養学科助教授
娘が日帝時代のことでいじめられたら…
しかし、娘が1年生の時、学校から帰ってきて私にこう聞いたことがあるんです。
「なあ、日本って、昔韓国に悪いことしたん?」
一瞬絶句しながらも、「来たな」と思いました。動揺している姿は見せたくないと思い、「うん、そうやで」と、とりあえず即答。それから、ゆっくり土地政策事業、創氏改名、強制連行など簡単な言葉でざっくりと話しました。
娘にとっても私にとっても、両国のルーツを否定するだとか、無かったことにするだとかということは、自身のアイデンティティを築き上げていく上で、結局は良い方法ではありません。
ですので、歴史問題を娘に語る時、「罪を憎んで人を憎まず」を心がけます。悪いことをしたという事実は認識させつつも、とにかく言葉を選びながら、人がそうなる背景についても考える必要を促します。ま、今の娘を見る限りどこまで通じているかは定かではありませんが、ことあるごとに背景を見るように説明します。構造的に捉えるようにと。
それから、2年生、3年生になって担任が変わる度、私は担任に娘の背景を知らせる手紙を書いてきましたが、今年、娘が4年生になる時は、もっと手紙が長くなりました。小学校4年からはそろそろ歴史教育も始まると聞いていたからです。
「歴史教育については賛成だが、娘がそのことのために友達から何か言われるようなことがあれば、それは担任が責任を持って解決してほしい」
私は手紙にそう書きました。そして、春の個人面談の時には、もう一度私の口から娘の背景を説明し、また歴史教育の重要性も重々認識していると伝えた上で、「それと個人攻撃は別物であり、もしそんなことがあった時は、先生は学級の子どもたちにさらに色々と説明し、個人攻撃は意味の無いこと、なぜ悪いことなのかをしっかり教える必要が出てきますよね」と釘まで刺しました。
見れば、先生は私よりずっと年下だったんです。ここは上下関係を大切にする韓国ですので、年上という立場が私を後押ししてくれているようで、思い切って話すことができました。
先生が神妙に聞いておられたのがとても印象的です。知ればとても良い先生で、何事もなく4年生が終わろうとしている今、わざわざ釘をさす必要も無かったのかもしれません。