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今や立法府は政府の「下請け機関」

12月6日(木) 朝、オペラシティに眼鏡を取りに行く。その後、入管法審議の取材で国会の参議院へ。法務委員会は別館で開かれている。安倍首相が午後3時から2時間だけ委員会に出席するという。今国会の最重要法案のひとつ、入管法の改正案をめぐる審議。委員会の前には僕らも含めてたくさんの報道陣(記者とカメラマンら)が陣取っている。

 安倍首相は、昨夜の経済人との宴会で「時差が残っているなか、あしたは法務委員会に出てややこしい質問に答えることになっています」などと国会を舐め切った発言をしていた。委員会室に首相が入っていく時に、カメラで撮りながら「ややこしい質問にどう答弁するのでしょうか」と喋っていたら、幹事社とかいう某社の人物が「ここはリポート禁止だよ」とか言ってきた。よくわかりにくい取材規制が今や国会内に蔓延しているのが現実だ。

 野党が技能実習生たちの悲惨な実態を追及しているのだが、与党や法務省側はそれに向き合うどころか、審議も尽くさずに時間切れで採決に持ち込もうというスケジュールが見え見えになっている。山下貴司法務大臣の横に着席した安倍首相はものすごく眠そうにしている。山下法相が首相への質問に割って入る場面が何度もあった。これが国会の空洞化というやつである。ところが取材する側もこの状況に慣れきっていて、国会空洞化報道自体が空洞化しているのではないか。

 17時50分に委員会の理事会終了。室内から怒号が聞こえてくる。法務委員長の解任決議案が出されたらしいが、その扱いをめぐってもめているようだ。今夜の強行採決はどうやらなさそうだ。国会前の「勝手に決めるな」「まともな国会運営を」という、入管法、水道法などの強行採決に抗議する集会に行ってみた。安保法制の時のような熱気や人出はない。それ以上に、地上波のテレビ局が僕ら以外にどこにも見当たらないではないか。あしたも取材を続けなければならない。いくつかの予定をキャンセルしなければならない。当たり前だ。

 夜、遅くに帰宅して、沖縄の大工哲弘さんから贈っていただいたソーキそばを食べる。うまい。

12月7日(金) 朝、早く目が覚める。フランスのパリで大規模デモが起きていたが、マクロン政権は予定していた増税を見送るという。「クレスコ」の原稿を書く。T氏に電話をして今夜の会は参加できない旨を伝える。

 午前10時から参議院の本会議。法務委員長の解任決議案等をめぐる審議。与党議員席からは笑い声や品のないヤジ、机を叩くノイズが聞こえてきて、全く緊張感がない。審議と呼べるようなものではない。山本太郎が「一人牛歩」をやっていた。一強政治の長期化の末に、今や立法府は政府の「下請け機関」になっていることが、議場で長時間傍聴していて痛いほどわかった。その後、再び法務委員会。今度は法務大臣の問責決議である。

 一旦、局に戻る。今後、この仕事を続けていくうえで、今年もっとも不愉快な出来事があった。記憶にしっかりとどめておこうと僕は心に誓った。入管法改正案の取材の最中なので、少し頭を冷やさなければ、これ以上仕事を続ける気力を維持できない。ほとんどのことがどうでもいいような気持ちになりかける。どう自分をコントロールするか。手元にある本やリーフレットを手当たり次第読む。『FORUM90』の青木理と安田好弘弁護士の対談の記録を読む。面白い。音楽が聴きたい。バッハのマタイ・パッションを聴く。こころに沁みる。

 参議院に戻る。旧知の有田芳生議員と話す。ある与党議員が、委員会休憩中に廊下で「審議が夜までかかるから、予約していたワインパーティーのキャンセル料が32万かかったよ」とか聞こえよがしに吹聴していた。こういう議員というのは、 ・・・ログインして読む
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筆者

金平茂紀

金平茂紀(かねひら・しげのり) TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

TBS報道局記者・キャスター・ディレクター。1953年、北海道生まれ。東京大学文学部卒。1977年、TBSに入社、報道局社会部記者を経て、モスクワ支局長、「筑紫哲也NEWS23」担当デスク、ワシントン支局長、報道局長、アメリカ総局長、コロンビア大学客員研究員などを経て、2010年より「報道特集」キャスター。2004年、ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『沖縄ワジワジー通信』(七つ森書館)、『ロシアより愛を込めて――モスクワ特派員滞在日誌 1991-1994』(筑摩書房)、『二十三時的――NEWS23 diary 2000-2002』(スイッチ・パブリッシング)など。共著に『テレビはなぜおかしくなったのか<原発・慰安婦・生活保護・尖閣問題〉報道をめぐって>』(高文研)、『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川書店)など多数。

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