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政局を呼ぶ「選挙の亥年」が始まった

選挙の「惑星直列」の年は波乱必至。衆参ダブル選挙は?

山下剛 朝日新聞記者

12年前は安倍退陣、24年前は新進党躍進

 2019年が幕を開けた。今年は、4年に一度の統一地方選挙と3年に一度の参議院選挙が重なる、いわば選挙の「惑星直列」の年だ。

 この12年に1度の亥年の選挙で何が起きるのか。過去の例を振り返ると、亥年の選挙は政局を生んでいることがよくわかる。

 12年前の2007年は安倍晋三首相の第1次政権だった。この年の参院選で自民党が歴史的惨敗を喫し、安倍首相はその後、退陣に追い込まれた。そして、衆院と参院とで多数派が異なる「ねじれ国会」が幕を開けた。

 さらに、24年前の1995年は自民党、社会党、新党さきがけの3党連立政権の村山富市首相だ。参院選で自社さ3党は過半数を維持したものの、前年に結党したばかりの新進党が改選議席を倍増させたほか、比例区で第一党となり、大躍進した。

 そして、36年前の1983年。中曽根康弘首相の自民は6月の参院選で安定多数を確保したものの、ロッキード事件の判決を受けた12月の衆院選(ロッキード選挙)で過半数割れに追い込まれた。自民は選挙後、新自由クラブと連立している。

 なぜ亥年の選挙は政局を呼ぶのか。

 統一地方選で地方議員が疲弊してしまい、続く参院選で動きが悪くなる。このため、比較的堅固な地方組織を持つ自民といえども、思わぬ苦戦を強いられることがあると言われてきた。

 2019年にはどんな政局が待っているだろうか。噂されている衆参同日選(ダブル選)はあるだろうか。今年予定されている選挙の情勢から、政局を占ってみたい。

1.27山梨県知事選から与野党激突

 まず大きな流れとしては、夏の参院選に向けて、与野党の対決ムードが高まっていく。その意味で、昨年から地方選挙で始まった「野党共闘」の真価が問われる一年になるだろう。

 昨年9月の沖縄県知事選では、オール沖縄を掲げた玉城デニー知事が誕生したものの、同じ日にあった品川区長選、さらに10月の新潟市長選、11月の新宿区長選挙と、野党共闘候補は連敗を喫している(詳細は「沖縄で勝ち、品川で負けた。野党共闘の課題は?」「野党共闘の31歳が新潟で敗れ沖縄の連勝は止まった」「連合は与党陣営へ。新宿区長選でも負けた野党共闘」を参照していただきたい)。

 与野党の戦端は、1月27日投開票の山梨県知事選で開かれる。

 いずれも無所属で、再選を目指す現職の後藤斎氏(61)=立憲、国民推薦=に対し、前衆院議員の長崎幸太郎氏(50)=自民、公明推薦=、共産党県委員会委員長の花田仁氏(57)=共産が推薦予定=、元参院議員の米長晴信氏(53)が挑む構図となりそうだ。

 長崎氏は、2005年の郵政選挙で、郵政民営化法案に反対した故・堀内光雄氏に対する刺客として出馬し、選挙区では僅差で敗れたものの比例区で復活当選。以来、堀内氏や後継の堀内詔子氏らと党内で激しい争いを繰り広げてきた。こうした経緯を考えると、自民がまとまるのは簡単ではない。

 一方、現職の後藤氏はもともと民主党衆院議員。前回、2015年の知事選は、民主だけでなく、自民、公明の推薦も受けて圧勝したが、今回は立憲、国民の推薦となった。また、共産も独自候補を擁立したため、後藤氏は現職ながらも、横綱相撲とはいかなそうだ。

 参院選山梨選挙区は1人区だ。知事選はその前哨戦として注目の選挙になる。

統一選の注目は北海道より大阪

 続いて春の統一地方選。知事選や政令指定都市の市長選、道府県議選、政令指定都市の市議選の「前半戦」が4月7日に、市区町村長選、市区町村議選の「後半戦」が21日に投開票される日程が決まった。

 さらに、後半戦の4月21日には、玉城デニー氏が沖縄県知事に転じたことなどによる衆院沖縄3区と大阪12区の補選も予定されている。

 首長選挙は与野党相乗りとなることが多いが、与野党対決になりそうだと目されているのが、北海道知事選だ。4期目の高橋はるみ氏(64)が知事選に出ず、参院選北海道選挙区に鞍替えすると表明したからだ。

 北海道はかつて「民主王国」と呼ばれていたが、高橋氏はこれまで、鉢呂吉雄氏や荒井聰氏ら民主系の候補を破り、抜群の選挙の強さを誇ってきた。

 このため、立憲では高橋氏の鞍替えを受けて対決ムードが盛り上がっていたが、ここにきて急速にトーンダウンしている。自民で高橋氏の後継として、北海道夕張市の鈴木直道市長(37)の名前が挙がるようになったからだ。鈴木氏は、財政破綻した夕張市の再建に取り組んできたことで知名度も高く、「鈴木氏が相手では戦いにくい」という事情だ。

 こうして統一選が凪になりそうな中、台風の目になりそうなのが、大阪だ。

2025年の万博開催が決まり握手する松井一郎大阪府知事(右)と吉村洋文大阪市長=2018年11月23日、パリ

 大阪維新の会代表で大阪府知事の松井一郎氏(54)と、政調会長で大阪市長の吉村洋文氏(43)が公明党幹部に対し、大阪都構想の協議が進まない場合、統一地方選前に辞職して同日選に臨む意向を伝えたからだ。

 4年前の統一地方選直後の5月。大阪市では「大阪都構想」の是非を問う住民投票があり、僅差で「反対」が上回って否決された。この結果を受けて当時の橋下徹大阪市長が政界引退を表明したことは記憶に新しい。

 実は、維新は今年夏の参院選と併せて都構想の是非を問う住民投票を再び実施すること目指していて、公明の協力が得られないと判断すれば、出直し選で信を問う、というわけだ。

 現状では統一地方選に力を入れている公明に対する揺さぶりという側面も強い。統一選の大阪府議選、市議選と同日選にして都構想を争点に掲げることで、府議選、市議選の維新候補を後押しする狙いも垣間見える。

 だが、もし選挙になれば、橋下氏なき維新が、地元大阪でどれほどの支持を得られるかが注目されることになるだろう。

 維新だけではない。2017年衆院選の際の民進党の分裂を受けて、旧民進系の地方議員は立憲、国民などに分かれた。統一地方選に向けて両党とも候補者の公募や擁立を進めているが、立憲、国民のどちらがより多く議席を得るかも、ポイントだ。

 昨年11月の千葉県松戸市議選(定数44)では、立憲の4人の候補が全員当選した一方で、国民は候補を1人に絞ったにもかかわらず、大差で落選し、「松戸ショック」と呼ばれた。こうした統一地方選での趨勢は、参院選にも影響するだろう。

参院選は野党共闘に遅れ、衆参ダブルは…

 与野党が対決するヤマ場は、夏の参院選になる。

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