大野正美(おおの・まさみ) 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)
1980年、朝日新聞社入社。水戸支局、外報部、東京社会部などを経て、1986年からサンクトペテルブルクに留学、モスクワ支局勤務は3回計11年。論説委員、編集委員、国際報道部・機動特派員を経て、現在は報道局夕刊企画班。著書に『メドベージェフ――ロシア第三代大統領の実像』『グルジア戦争とは何だったか』(いずれもユーラシア・ブックレット、東洋書店)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
保守色が強いロシアの政治的土壌にあって、女性の政界への進出はそれほど歓迎されているとはいえない。
今年3月の大統領選挙の半年前にあたる2017年10月の世論調査では、国家の各種最上級ポストに女性が男性と並んで就くことに、賛成は約60%とそれなりの支持を集めた。
ところが、「今後10~15年の間に女性大統領の誕生を望むか」との質問に、賛成は34%に過ぎなかった。反対は53%にのぼった。
「女性の大統領になりうるのは誰か」との質問には、マトビエンコ上院議長との答えが一番多く、6.1%だった。以下はいずれも1%前後と、支持は極めて低かった。
注目すべきなのは、前稿で紹介した元「美しすぎる検事」ナタリア・ポクロンスカヤ下院議員が、人気テレビキャスター出身で3月の大統領選挙で4位となったクセニア・サプチャークさんと並んで0.4%の支持を受け、4位に入ったことだ。
サプチャークさんがロシア改革派のかつての指導者アナトリー・サプチャーク元サンクトペテルブルク市長の娘であるように、ポクロンスカヤさん以外はいずれもエリツィン前大統領時代の1990年代からの活動歴を持ち、全国に広く顔が知られる存在だ。2014年の「クリミアの春」で初めて全国的な知名度を得て、16年秋に下院議員になったポクロンスカヤさんがすでにこうした女性たちと並ぶ位地にあることは、女性にとって有利とはいえないロシア政界への急速な進出ぶりを象徴する。
その人気ぶりは、同じ17年秋に行われた「メディアの言及が多かった下院議員」の調査結果によく示されている。ここでポクロンスカヤさんは堂々の1位となった。
ロシア紙ベドモスチが伝えた調査結果によると、17年秋の下院会期中、メディアによるポクロンスカヤさんへの言及は4万1153件と、元大統領府第1副長官で政権与党「統一ロシア」の重鎮であるボロージン下院議長の3万8272件を大きく引き離した。3、4位で続いたロシア政治の長老ジリノフスキー自由民主党党首、ジュガーノフ共産党委員長も、言及件数でははるかにポクロンスカヤさんに及ばない。