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日本にも政府から独立した「国家人権機関」を

馬橋憲男 フェリス女学院大学名誉教授

守られない国連勧告

 日本は1998年以降、国連で国家人権機関の設置を再三再四勧告されている。2017年の国連人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)では、日本に対する勧告でもっとも多くの国が求めたのが死刑廃止と並んでこの国家人権機関の設置である。各種の人権条約の対日国連審査でも、毎回同様な勧告が繰り返されている。

 「日本的な人権」なるものがまことしやかに説かれる。戦争の教訓から、人権は普遍的であり、国籍、性別などを問わず、すべてのひとに保障されるべき権利とみなされる。そのために各国は国連であらゆる人権について共通の世界基準を作成し、それに基づいて実施する。言うまでもないが、この基準を作成するのは、日本をはじめ国連加盟国の政府であり、間接的には国民である。

 この世界基準の最たるものが国際人権条約であり、現在30以上制定されている。そのうち主要な市民的・政治的権利(自由権)に関する国際規約、女子差別撤廃条約、人種差別撤廃条約、障害者の権利条約などは、締約国が条約を守っているか定期的に国連で審査し、改善に向けて勧告を行う。

 この国連審査が日本では単なる「通過儀式」のように軽んじられ、その後の改善につながらない。冒頭の人権問題のうち、早くから指摘を受けているものも少なくない。

 例えば外国人技能実習制度は国連の2008年自由権規約委員会で取り上げられている。「外国人研修・技能実習生が国内労働法令、社会保障の保護から除外され、法定最低賃金を下回る研修手当を受け、無休で残業を強いられ、しばしば雇用主に旅券を取り上げられている」と懸念。日本政府に彼らの権利を保護し、低賃金の雇用よりも能力開発に焦点を当てる新制度への切り替えを勧告した。2014年にも繰り返し勧告し、2018年には別の人種差別撤廃委員会も同様の勧告を行っている。

 この制度が「国際貢献」の名のもと多くの犠牲者を出していたことが、最近になって判明した。報道によれば、2010~17年に174人が死亡。低賃金・未払い、ハラスメントなどを理由に過去4年間に毎年5000人もが失踪しているという。

 強制不妊問題にいたっては、なんと20年前の1998年にやはり自由権規約委員会が、「障害を持つ女性の強制不妊の廃止を認識する一方、法律が強制不妊の対象となった人達の保証を受ける権利を規定していないこと」を遺憾とし、日本政府に必要な法的措置を取るよう勧告している。

 こうした国連勧告には法的な拘束力がない。実施するかどうかは、あくまでその国次第である。そのため勧告の多くは時と共に忘れ去られ、また、しばらくすると蒸し返される。このパターンの繰り返しである。これこそが政府間機関である国連の限界であり、創設以来、最重要課題として取り組んできた人権における永年の課題である。

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筆者

馬橋憲男

馬橋憲男(うまはし・のりお) フェリス女学院大学名誉教授

共同通信記者、国連職員などを経てフェリス女学院大学教授。専門は国連・グローバル問題の政策過程、とくに市民・NGOの参加。現在は国家人権機関について研究。著書に『熱帯林ってなんだ-開発・環境と人びとのくらし』(築地書館、1991年)、『国連とNGO-市民参加の歴史と課題』(有信堂、1999年)、「『世論が…』が問われる日本の死刑制度」(国際交流研究第17号、2015年)「なぜ『国家人権機関』が日本に必要か?」(同19号、2017年)など。