メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

[116]辺野古の海への「土砂投入ショー」

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

辺野古の海上から台船をみる 土砂のブルーシートを撤去辺野古の海上から台船をみる。土砂のブルーシートが撤去される=撮影・筆者

12月11日(火) 午前中「報道特集」の定例会議。途中で抜けて、参議院議員の事務所へ。沖縄取材の仕込みのため。短時間、局に戻ってみたら職場で何かがあったようだ。何人かの人たちと言葉を交わす。サラリーマン社会の決まり事、人事異動という出来事らしい。よく事情がわからないが、怒りをあらわにしている人も、そうでない人もいる。そう遠くない過去の不愉快な記憶が押し寄せてきた。人間は時に、みるに耐えないほど醜悪になる生き物だ。

 いったん自宅に帰って身支度をしてから羽田空港へ。17時10分発の飛行機で羽田から那覇へと向かう。乗った機種がA320というすごく古い機種で、全席エコノミー。Wi-Fiもダメという代物だった。それで、機内ではひたすら本を読むか、PCで原稿を書く以外にすごしようがないのだった。やれやれ。でも読書が進んだ。

 那覇は夜でも気温24度。あたたかい。ダウンジャケットなんか着てくるんじゃなかったかなあ。夜、那覇在住の旧知のジャーナリストたち、Kさん、Hさん、Yさんらと情報交換。14日の動きについて。玉城県政は本当に茨の道を歩んでいるとの共通認識。NHKの「クローズアップ現代+」があした沖縄の辺野古をめぐる特集を放送するとのこと。制作過程で例によって、東京政治部とのあいだでいろいろとあったらしい。

有刺鉄線は誰から何を守っているのか

12月12日(水) 朝8時にホテルを出て、カメラクルーとドッキングして名護市の琉球セメント安和桟橋へ。出入口に無言のガードマンたちが数人立っていて、まるでキャンプ・シュワブ・ゲート前のような厳戒警備態勢がとられていた。ピリピリした空気が漂っていた。この桟橋から辺野古に投入される土砂が運搬船に積み込まれて出港していったのだ。本部港から運び出されるはずだったが、台風で港が損傷したため、この民間会社の桟橋を使うことを一方的に決めたのである。そのこと自体の是非も問われている。

 そして、もうひとつ、僕らがここにやって来た理由のひとつは、抗議行動に対する警備のためとかで、この敷地の周囲に剃刀の刃みたいな金属片のついた有刺鉄線が張りめぐらされていることを撮影するためだった。琉球セメントの海側の箇所には、まだその有刺鉄線が残っていたが、歩道側の箇所は住民らからのクレームを配慮したのか、ある日の夜中にこっそりと撤去された。海側の箇所の有刺鉄線を撮影するには、海中に一度ざぶんと入らないと近づけない。困った。すると、Mディレクターが、歩道側にまだその有刺鉄線が撤去されずに部分的に残っているのを発見してきた。さっそくそちらに移動すると、確かにそれがあった、あった。

 琉球セメントの桟橋敷地周囲に張られていた有刺鉄線

1512 同上 剃刀の刃のような鋭い金属片がついている琉球セメントの桟橋敷地周囲に張られていた有刺鉄線。剃刀の刃のような鋭い金属片がついている=撮影・筆者

 この有刺鉄線は、もともと戦場や紛争地などで使われた軍事用のもので、

・・・ログインして読む
(残り:約5115文字/本文:約6303文字)