統一地方選と参院選が重なる亥年は投票率が下がり、自民党が苦戦するというけれど……
2018年12月30日
2019年は統一地方選挙と参議院選挙が同時に行われる「亥年(いどし)」であり、選挙や政治の世界では、自民党が苦戦を強いられる「亥年現象」が起こるとされている。これは元朝日新聞政治部記者の石川真澄氏によって提唱された「仮説」である。
統一地方選挙が4年に一度、参議院選挙は3年に一度行われるため、最小公倍数の12年ごとにある「亥年」には、両方の選挙が同時に行われる。具体的には、4月に2回、前半と後半で統一地方選挙があり、地方の各種団体・組織や企業に基礎票を持つ自民党議員は、このときに力を使ってしまうために、その後に行われる参議院選挙で、選挙マシーンが十全に稼働しない。結果として、参議院選挙の投票率は上がらず、自民党の得票数も伸びずに苦戦するというのが、石川氏の論理だ。
ただ、前回の「亥年選挙」だった2007年は、その前の2004年参院選に比べて投票率は上がっている。これは、2004年の参院選で民主党の当選者数が自民党を上回り、政権交代への期待が膨らんできたことが大きい。マニフェストが浸透してきて、政策を効率的に訴えられるようになったということも理由として挙げられる。
実際、翌年2005年の衆院選、いわゆる郵政選挙では自民党が圧勝したが、2007年の参院選では民主党が大勝し、自公の議席数を抜いてトップに立った。亥年だからといって、投票率が下がるとは限らないのだ。
とはいえ、いまは支持率の低迷に見られるように、野党の弱さがすっかり常態化している。来年の選挙は「亥年現象」どころか、自民党の優位は変わらないと見る向きさえある。はたしてそうだろうか?
そのため、2019年参議院選挙は、単純に数字だけをみても、自民党にとって非常に厳しい選挙になることは間違いない。今年、安倍政権は参議院の定数を6増やす無謀とも言える法案を成立させ、さらに来秋に予定される消費増税への不満を抑えるための「バラマキ」も行っているが、それが選挙に及ぼす影響は未知数だ。
参議院選挙にあわせて衆議院選挙も行う「同日選挙」も噂(うわさ)されている。参議院選挙の苦戦が予想されるなか、負け幅を最小限に抑えようという狙いがあるとの見立ては、間違いではないだろう。しかし、たとえ同日選挙に踏み切ったとしても、衆議院も前回並みの議席を維持、もしくは増やすのは厳しく、安倍首相は難しい判断を強いられることになる。
参議院選挙の行方を占う材料はいくつかあるが、なかでも最も重要なのは統一地方選挙の結果だと私は考えている。それは、統一地方選挙で勝ったから、参院選で有利になるというような単純なものではない。選挙を通じて地方の民意が明らかになることによって、その後の選挙戦略が大きく影響を受けることになるからだ。
2012年末に第2次安倍政権がスタートしてから、統一地方選挙は2回目となる。前回の2015年は、「アベノミクスを地方へ」をスローガンに掲げ、成果が出ているとされたアベノミクスを地方にまで広げていき、経済的に潤わせることを約束した。
この時は結果的に知事選は全勝、道府県議選では24年ぶりに過半数の議席を獲得するなど、自民党は圧勝した。野党第一党だった民主党は、議席占有率を下げる結果に終わった。
選挙のことをあまり知らない一般の有権者のために、簡単に説明しよう。
現在、選挙期間中にどういうビラを配布できるかは公職選挙法で決められており、都道府県議や市議選では、候補者の写真や名前を入れたビラを選挙期間中に配ることができない。国政選挙や首長選挙ではこうしたビラも認められているが、配布できる枚数は決められており、しかもすべてのビラに証紙を貼らなければならない。
来春から、あらゆる選挙で運動用ビラが認められるわけだが、証紙貼りのルールはそのまま。いくら顔写真や名前入りのビラを配ることが出来ると言っても、都道府県議会1万6000枚、政令指定都市の市議選8000枚、そして、政令市以外の市議会と特別区議選は4000枚に証紙を貼らなければ配ってはいけない。お金もスタッフもいない候補者には、そもそもご退場願うというのが立法趣致である。
しかし、これは考えようで、もともと組織力の無い候補者にとって「ビッグチャンス」にもなり得る。
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