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常任理事国入りの理想は一旦棚上げを

現実を見据え、準常任理事国制度の創設を新たな外交目標に掲げよう

登 誠一郎 日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長 元内閣外政審議室長

G4諸国(日・独・インド・ブラジル)による努力

 設立後70年以上が経過して加盟国が200近くに達した国連は、近年、テロ、難民などの新たな問題への対処が十分に機能していないとの批判を浴びている。これに対応するためには、常任理事国5か国と非常任理事国10か国の計15か国で構成されている安全保障理事会の構成国数と権能の改革が必要と認識され、これまでに多くの議論が重ねられてきた。

 これまで日本政府が、常任理事国入りの資格を有していると広く認識されている独、インド、ブラジルとともに推進してきた改革案(G4案)は、①常任理事国6か国増、非常任理事国4か国増で計10か国の安保理議席を増加する、②新常任理事国は15年間は拒否権を行使しないことを骨子とするものである。国連憲章の改正のためには、国連総会で3分の2以上の賛成と、5常任理事国すべてを含む加盟国の3分の2以上の国の批准が必要である。

 しかるにG4案に対しては、既得権が薄められることを嫌う現常任理事国が極めて消極的であり、また各地域の代表国とはなりにくい中堅国(G4諸国のそれぞれの地域的ライバルと目される韓国、イタリア、パキスタン、アルゼンチンなど)は常任理事国数拡大そのものに反対している。

 さらに数の力を持つアフリカ諸国も、一部の有力国が拒否権に固執するなどにより内部分裂を生じてG4案への支持でまとまらないなどの理由から、賛成数が満たされる見通しは立たず、この案は国連総会での投票に付されることはなかった。

有識者グループの提案

 その後しばらくは安保理改革について目立った動きはなかったが、4年ほど前に、ウクライナ情勢やシリア問題に直面して国連が実質的な機能を果たせない現状に危機感を覚えた有識者グループ(アナン元国連事務総長を委員長として何人かのノーベル平和賞受賞者を含む)が、安保理に長期任期で再選可能な議席を設ける(いわば準常任理事国制度)とともに、常任理事国の拒否権行使に一定の制約を課す趣旨の提案を発表した。

拡大米ニューヨークの国連本部で最後の会見を終え、記者と握手しながら会場を後にするアナン事務総長=2006年12月19日

 この提案の内容は日本の常任理事国入りという目標からは大きく後退するものである。

 しかし、日本を取り巻く国際情勢の推移及び日本の相対的パワーの低下に鑑みると、常任理事国入りという理想をいつまでも追求し続けることが正しいのであろうか。

 従来、日本が常任理事国入りを主張してきた根拠の一つは、国連における分担金の多さであった。しかし、先日国連が採択した2019年から3年間の日本の分担率は8.56%であり、とうとう中国に抜かれて第3位になった。10数年前のピーク時には、20%を超えて、米国の分担率に迫る勢いであったことを想起すると、隔世の感がある。

 勿論、分担率が減少したことで、国連における日本の重要性が低下したことにはならないが、PKOに対する人的貢献の低さなども加味すると、残念ながら、国連の舞台で日本を5大国と同等に遇するべきとする見方も少なくなりつつあることは否めない。

 憲章改正の条件として、中国を含む5常任理事国すべての批准が必要という冷厳な事実に照らすと、国際社会における日本の地位向上を阻止したいという中国の姿勢が変わらない以上、遺憾ながら現在の憲章下において日本が常任理事国になれる可能性はほとんどゼロに近いと言わざるを得ない。

 従って国連機能の一層の強化、及び日本の活躍の余地の抜本的拡大のためには、常任理事国入りという究極の理想の追求は一旦棚上げにして、まずは、日本が安保理に事実上「常在する」ということが現実的な国益と考えられるので、その実現を図るべきではなかろうか。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、JTBコミュニケーション・デザイン顧問。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

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