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シャットダウンの米国で考えた移民とこの国のこと

トランプ政権のシャットダウンは移民の国アメリカのアイデンティティにつながる問題だ

山本章子 琉球大学准教授

「シャットダウン」とは

 米連邦政府は、10月1日の会計年度開始に合わせて、議会が年度予算を法律として作成する。大統領は予算権を持たないが、上下両院で通過した予算案を承認するかどうか判断する。大統領が議会の予算案に拒否権を行使した場合、予算は成立しない。年度予算が不成立の場合、議会は短期間の「つなぎ予算」案を作成できるが、大統領がこれも承認しなければシャットダウンが起こる。

 ビル・クリントン政権やバラク・オバマ政権では、民主党の大統領と議会の多数を占める共和党との党派対立が政策対立、ひいては予算の不成立に発展し、シャットダウンが起きた。

 これに対して、2017年1月に発足した共和党のドナルド・トランプ政権は、上下両院の過半数を共和党で占めながら、2018年の間に三度ものシャットダウンを起こした。かつてなかった事態だ。

 予算案の上院通過には、過半数ではなく3分の2以上の賛成が必要となる。議員数でいうと、定員100名のうち60名以上の賛成を要するが、現在の共和党の議席は51にとどまる。主に不法移民政策をめぐって、トランプ大統領の意をくんだ予算案を通したい共和党と、反対する民主党との間で妥協が成立せず、シャットダウンの頻発につながっている。

メキシコ国境の壁建設費をめぐり議会と衝突

移民キャラバンが到着した際、メキシコとの国境検問所のそばの国境の壁の上に鉄条網を設置する米海兵隊員たち=2018年11月20日、サンディエゴ郊外拡大移民キャラバンが到着した際、メキシコとの国境検問所のそばの国境の壁の上に鉄条網を設置する米海兵隊員たち=2018年11月20日、サンディエゴ郊外
 今回のシャットダウンは、2016年の大統領選でトランプが公約に掲げた、不法移民の入国を阻止する名目でメキシコとの国境に壁を建設する費用を、予算案に盛り込むかどうかの攻防によって起きた。

 トランプは選挙中、壁の建設費用を全額メキシコに負担させると主張していた。彼の当選後、メキシコは当然ながらこれを拒否する。そこでトランプは、つなぎ予算案に壁の建設費用50億ドルを盛り込むよう議会に要求したが、民主党は受け入れなかったのだ。

 2018年11月の中間選挙で、上院の共和党議席は52まで増大したが、3分の2に満たないことには変わらない。しかも、下院では民主党が過半数を奪還した。2019年1月3日から始まる新議会は、上下院の多数党が異なる「ねじれ」議会となる。これまで以上に法案が通りにくい状況となることは確実である。

 トランプは壁の建設費用が認められるまでシャットダウンを続けると主張。現状は年明けまで変わらないと見られている。だが、ねじれ議会で状況が好転する可能性はかぎりなく小さい。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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