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シャットダウンの米国で考えた移民とこの国のこと

トランプ政権のシャットダウンは移民の国アメリカのアイデンティティにつながる問題だ

山本章子 琉球大学准教授

シャットダウンをためらわない理由

シャットダウンでも観光客でにぎわう米議会前=2018年12月26日、ワシントンD拡大シャットダウンでも観光客でにぎわう米議会前=2018年12月26日、ワシントンDC。山本章子撮影
 今回のシャットダウンでは、9つの連邦政府機関が閉鎖し、約38万人の政府職員が自宅待機。約42万人以上が無給で働かざるをえなくなった。

 ただし、多くのアメリカ人の日常生活には影響がないようだ。とりわけ、トランプの主な支持層といわれる地方のブルーカラーの白人は、連邦機関やパスポートの必要な海外旅行とは縁遠い者が多い。トランプがシャットダウンをためらわない理由だ。

 オバマ前政権の2013年のシャットダウンでは、ニューヨークの自由の女神像、ワシントンD.C.の議会(議会見学は人気ツアーの一つ)やスミソニアン博物館、ナショナル・ギャラリーなども閉鎖され、観光収入の莫大な損失が生じたと批判された。

 しかし、2018年末のシャットダウンでは、これらの観光施設はクリスマスをのぞいて通常通り営業。クリスマス休暇を利用して全米から訪れた家族が連日、長蛇の列をなしていた。スミソニアンの場合、主な予算は連邦政府の財源から支出されるが、一部は寄付で賄われている。シャットダウン中は寄付金を運営費にあてるという。議会も開いており、私は議会図書館で史料調査を行うことができた。

移民を排斥するトランプのアメリカ

 ところで、今回のアメリカ滞在は、2016年10月にニューヨークを訪れて以来、2年ぶりだった。いまさらながら、オバマ政権期(2009~2017年1月)に空港の店やホテルで働いていた、多くのソマリア人移民の姿を見なくなったことにショックを受けた。ソマリア人は美男美女ぞろいで、明るく話好きで親切だという印象を持っていただけにだ。

 トランプは大統領就任直後、いわゆる「入国禁止令」で、ソマリアを含めたイスラム圏の国々からの入国を制限し、これらの国々の移民・難民6万人弱のビザを無効とした。連邦地裁は入国禁止令を違憲と判断したが、連邦最高裁は逆に2018年6月末に支持する。

 入国禁止令は、イスラム国(IS)などのテロリストの入国阻止を名目としている。だが、2017年12月には、イラクとシリアにおけるIS掃討作戦の勝利が宣言された。その半年後に下された最高裁の判断には、疑問符をつけざるをえない。2018年12月19日には、トランプが米軍のシリア撤退を発表(イラクは駐留継続)。反対するジェームズ・マティス国防長官は辞意を表明した。

 トランプは、テロリストのレッテルをはってイスラム系移民を排斥した。また、シャットダウンを繰り返し、メキシコ人が相当数を占める不法移民を排斥しようとしている。彼の祖父が1885年にドイツから来た移民で、仕事を転々とし、第1次世界大戦中に敵国の人間として差別されながら逝去した歴史を知らないのだろうか。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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