「辺野古」県民投票の会代表の元山さんに聞く
東京に出て歴史を学び、基地に目が向いて、沖縄の痛みを感じられるようになった
岩崎賢一 朝日新聞社 メディアデザインセンター エディター兼プランナー
沖縄県民投票の意味とは
沖縄県は今、2月14日に告示される県民投票で揺れています。
米軍基地建設のために辺野古沿岸部を埋め立てていいのかの賛否を問うため、県は9万2848人の署名を受け取り、条例を制定しました。しかし、6市が投開票の事務を行う予算を認めず、実施が危ぶまれているのです。
全市町村から署名を集めた「辺野古」県民投票の会の代表、元山仁士郎さん(27)を1月4日に訪ねました。県民投票の意味は何か、全市町村が参加する道筋はあるのか、沖縄の痛みを本土の人たちが共有するためにはどうしたらいいのか、聞いてみました。
元山仁士郎(もとやま・じんしろう)「辺野古」県民投票の会の代表。1991年、沖縄県宜野湾市生まれ。27歳。現在は一橋大院生(休学中)
――県民投票は、1996年にも行われました。1997年には、名護市民投票もありました。なぜ、今、改めて県民投票を行おうと思ったのはなぜですか。
私の中では、二つのテーマがあります。「世代間の対話」と「島々の対話」です。「世代間の対話」は、戦争体験者が少なくなってきていて、あと5年、10年経ったら、きちっと話せる人がいなくなってしまうのではないかと感じています。私の父方の祖父は90歳、祖母は86歳です。
米軍基地と密接にかかわる戦争と基地を今後沖縄の人がどう考え、どう向き合っていけばいいのか、不安に思っていました。県民投票が、私たち孫の世代と祖父母らの世代の対話の糸口になればいいなと思って動き出しました。
私自身も祖父母への問いがあって、「なんで沖縄戦が起きたのか」と問うたことがありました。「祖国を守るのはすばらしいこと」、「死ぬのをいとわない」といったことを教えられてきた時代だったと言っていました。
なぜ、祖父母の世代はそれに疑問を持てなかったのか、私の中にもやもやがありました。
それを今に当てはめてみたら、辺野古の基地建設について、「何で造られてしまったのか」、「何で止められたのか」と私も子や孫に聞かれると思います。そこで県民投票をやってもいいんじゃないかと思って動きました。

2月24日投開票予定の沖縄県民投票は、全市町村で実施されるのか?
――「島々の対話」とは。
壮大な話をすると、琉球から続く課題だと思います。もちろん、薩摩の影響もありましたが、沖縄には首里中心の支配構造があって、人頭税もあったし、武力による制圧もありました。
元山という名字は、父方の祖父が奄美の喜界島出身だからです。父方の祖母は宮古島の出身です。母方の祖父は東村出身で、祖母は名護市出身です。ルーツをたどると、琉球・沖縄の様々な地方や島が出てきて、沖縄の中での地方への関心が高まりました。
辺野古の基地問題は、沖縄にとって大きな問題です。しかし、署名集めでは、八つの島、宮古、石垣、西表、与那国、渡名喜、渡嘉敷、南大東、南大東を回りました。「遠い問題だからよくわからない」とよく言われましたが、私たちが訪ねたことで「沖縄の問題として考えないといけないね」と話してくれた人もいました。
私たちは「辺野古の基地問題を考えてください」とお願いするだけではなく、他の島ではどういう問題があるのかも耳を傾ける必要があると思います。渡嘉敷島では観光客が増えていて水不足の問題を抱えていました。北大東や南大東の島では、若い人の人手不足の問題がありました。これらについても、本島の人たちは対話しないといけないということです。県民投票を通じて、こういった島々の対話が少しでも進めばいいと思っています。