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29時間で身につく「にわか韓国語講座」(19)

第6章 「日本語力」で上達する 1.しりとり・連想ゲーム

市川速水 朝日新聞編集委員

日韓合作テレビドラマ「フレンズ」のヒロイン、深田恭子さん。2002年に両国で上映され、観光地やレストランもふんだんに紹介されました

単語カードをめくって覚えるやり方は、すごく遠回りで忘れやすい

 アンニョンハセヨ!

 日本語の語彙力を韓国語にどう活かすか。近道はないだろうか。五里霧中で他人のアドバイスもあまり頭に入らず、様々な失敗をした経験からずっと考えてきました。

 これまでの第1章~第4章の要点を思い出してください。

 日本語と同じ意味の漢字語が多い、漢字の読みは一つ。日本語の音読みとも共通点が多い。これらを踏まえると、「日本語のXは韓国語でYという」、あるいは「韓国語のYはこういう意味」という英語的な覚え方、いってみれば単語カードをめくって覚えるやり方は、すごく遠回りで忘れやすいことが分かったことと思います。

 韓国語の場合は、「日本語のXは韓国語でX’ではないだろうか」と予想し、もし違っていたら、なぜ違うのかを考えて納得し、その覚えた言葉を未知の言葉の推測にまた応用していくのが効率的です。もちろん日常会話的には助詞もあるし語尾が変化する、形容詞の形が変わるなど完成した文章や会話には行き着くにはいくつかの関門があります。

 ただ、あらゆる言語習得にいえることですが、語彙を増やすことが飛躍の秘訣です。「うまく話したい」という願いは願いとして少し後回しにしても、日本語力をフル回転させてみましょう。

しりとりと連想ゲームで語彙を増やしましょう

 まず、「しりとり・連想ゲームで語彙を増やす」です。

 普通のしりとりでなく、漢字語のしりとりです。最後の漢字(語)を次の熟語につなげるゲームです。実際にやってみましょう。

提案→案内→内部→部長→長男→男女→女性→性格→格差→差別→別途→途中→中国→国民→民主→主人→人間→間接→接待→待機→機会→会食→食事→事態→態度→??(永遠に続きそうですね)

 ここに挙げた25の言葉は全部、韓国語でも同じ意味です。では25種類の単語を覚えなければならないかというと、違いますよね。覚えるのは半分。発音とハングルの形を覚えればいいわけです。

 「内」は「ネ」、「主」は「ジュ」など日本語に近い発音も山盛りです。さらに「案」「部」「格」「民」「機」「度」は日本語とまったく同じ「アヌ」「ブ」「カク」「ミヌ」「キ」「ド」で通じますので、覚える必要すらありません。念のため、ハングルで表記し、発音の留意点を含めておさらいしておきます。

제안(チェアヌ)→안내(アヌネ)→내부(ネブ)→부장(プジャング。ブとプの違いは第13週の有声音化を参照)→장남(チャングナム)→남녀(ナムニョ)→여성(ヨソング)(女が冒頭に来る時は母音と反応して「ナ行」の子音が脱落するので「ニョ」が「ヨ」となる)→성격(ソングギョク)→격차(キョクッチャ)→차별(チャビョル)→별도(ピョルド)→도중(トジュング)→중국(チュンググク)→국민(グングミヌ。「学問」と同じ原理で「ング」に)→민주(ミヌジュ)→주인(チュイヌ)→인간(イヌガヌ)→간접(カヌチョプ)→접대(チョプテ)→대기(テギ)→기회(キフェ)→회식(フェシク)→식사(シクサ)→사태(サッテ)→태도(ッテド)

 どうですか? 知っている文字と知らない文字の推測、それが当たればまた応用、と最初は多少疲れますが、「1文字の読み方は原則1つ」だからこそできるゲームですね。

 では、完全なしりとりでなくて、前後どちらの字をとってもいい「中途半端しりとり」はいかがでしょう。

会話→話術→手術→選手→選挙→挙行→歩行者→記者→日記→日曜日→…

 というような具合に。

 次に連想ゲームです。同じ分野で共通することが多い字をあてはめていきます。「学」「論」「法」など共通語があれば効果的に語彙を増やせます。

【学】哲学(철학、チョルハク→チョラク) 化学(화학、ファハク) 科学(과학、クアハク) 経済学(경제학、キョングジェハク) 学科(학과、ハックア)
【史】歴史(역사、ヨクサ) 世界史(세게사、セゲサ) 国史(국사、ククサ=韓国史のこと)
【戦う】戦争(전쟁、チョヌジェング) 戦法(전법、チョヌボプ) 戦略(전략、チョルリャク) 策略(책략、チェングニャク)*最後の二つは読み方に注意です。「音変化」の章をご参考に。
【学校】教室(교실、キョシル) 教師(교사、キョサ) 室内(실내、シルレ) 教科書(교과서、キョクァソ) 学校(학교、ハクキョ) 大学(대학、テハク) 学生(학생、ハクセング)

ちょっと寄り道㉚ 難しい分かち書き

 このシリーズで、何度となく例文を紹介しながら、あえて触れなかった大事なことがあります。単語(語句)同士の間に隙間を入れる「分かち書き」というルールです。ティオスギ(띄어쓰기)と言います。そのまま「分けて」「書くこと」を意味します。

 なぜ前半の方で説明しなかったかというと、ひとつは私自身が「通じればいいじゃん」という観点から、あまり重視してこなかったこと。二つ目は、分かち書きを突き詰めて考えると、すごく難しいルールがあるし、そこまでマスターしているとは言えないため、他人に教えるのはとんでもないと思っていたことがあります。

 ただ、このままシリーズを終えるのはあまりにも義理を欠くので、基本を少しだけ説明します。まず、何のために分かち書きのルールがあるのか、は想像できますね。

 表音文字であることから、全部つなげてしまうと、どれが名詞で助詞で語尾なのかわかりにくい。だから、ひとまとまりずつ離して置こうというのが第一目的です。もし日本語が全部ひらがなだったら、あちこちに読点を打つか、単語同士の間に隙間をつくるでしょう。

 ですから、漢字語など2~4文字の熟語や固有名詞はひとまとめにする、そして、「가」「을」のような助詞はその前の語に付け、どの語句の助詞かを分かるようにする(隙間を空けないという意味)、「습니다」「요」のような語尾もその前の動詞や名詞とは一体にする(隙間を空けない)といった基本が生まれるのです。それは、みなさんはすでに知らず知らずのうちにすでに頭の中に入っているはずです。もし分からなくて適当に分けたとしても(私がよくやります)、誤解がなければ通じます。

 では、「誤解される場合=分かち書きを間違ってはいけない場合」とはどんな時なのでしょう。

 代表的な「誤解の元」になる例文をいくつか紹介します。

잘 못 하다→よくできない
잘못하다→間違える、誤る、ヘタをうつ(少し下品ですが)

 

 発音は両方とも「チャルモッタダ」です。「잘」は「よく」「うまく」を意味する副詞、 「못」は「not」を意味し、後ろにつく動詞を否定する役割です。ところが、全部つなげて「間違える」という別な単語になるのです。辞書にも載っています。

 不祥事を起こした社長がテレビカメラに向かって「잘못했습니다」と頭を下げる場面を何度か見ましたが(ドラマでも)、これは後者の意味になります。

 日本語で言うと、「おれはしらない」と書いて「俺は知らない」という意味のつもりだったのに、「おれ はしらない」(俺、走らない)と受け取られてしまうのに似ています。

 ほかにも…

개새끼→この野郎
개 새끼→子犬 (ケセキ)
큰 집→大きな家
큰집→長兄の家、おじさん宅 (クヌチプ)

 

 など、分かち書きを間違えると意味が違ってくる言葉があります。

 ほかに、「にわかん」的には許されても、「文法」という厳密なルール上では、実はほかにもいくつか決まりがあります。

・「수」「것」は分けて書く

 どちらも頻繁に出てくる言葉です。形式依存名詞と呼ばれています。「수」は、「할 수 있다」(できる)のように、可能性を示したり、「すべ(術)」、「わけ」などを示す時に使い、「것」 も、それ自体の「こと」「もの」という意味とは別に「친구인 것 같아」(友達のようだ)のように形式的に使います。この時に、独立させればより意味が通じやすいという趣旨です。

・ものの単位と数は離して書く

 「한 개」(1個)「차 세 대」(車3台)となり、お互いはつながりません。

 固有名詞と肩書の間は? 長い病気名など専門用語は? などを説明している教本もありますが、ケース・バイ・ケースだったり「どちらでもいい」とかの説明が目立ちます。ここでは触れませんが、「誤解さえなければちゃんと読んでもらえる」と気楽に臨んだ方が良さそうです。

固有語と漢字語を織り交ぜて考えるゲームです

 最後に、固有語と漢字語を織り交ぜて考えるゲームを一つ。テーマを最初に挙げ、「その周辺の固有語」をどこまでいえるか、です。山手線ゲームみたいですが。

 少しやってみましょう。

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