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田中均氏が正念場に来た日本外交へ直言する

対立を深める日韓、停滞する日朝、北方領土交渉で揺れ動く日ロ、そして中国との関係…

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

日韓は「小渕・金大中共同宣言」の原点へ立ち戻れ

 戦後、日本にとって韓国は李承晩ラインなど種々の問題はあり、文字通り「近くて遠い国」であったことは事実だ。しかし1965年に基本条約が結ばれ国交が正常化されて以降、韓国の国づくりや民主化へ多大の支援を行ってきたのは、やはり戦前日本が朝鮮半島を支配し多くの傷を与えたことへの反省の気持ちがあったからだ。

 韓国は凡そ30年前に民主化し、20年前に先進国の仲間入りをした(1996年に経済協力開発機構(OECD)加盟)訳で、東アジア地域の中で米国の同盟国でもある韓国は日本にとっても得難いパートナーであるはずだ。

 1998年に金大中大統領が訪日し、小渕首相との間で合意発表した日韓共同宣言は過去を乗り越え未来志向の関係を作る決意を示している。その結果、日韓サッカーワールドカップ共催や羽田・金浦シャトル航空便の開始、更なる文化開放など新しいパートナーシップが構築された。

 日韓両国はこの「小渕・金大中共同宣言」の原点に立ち戻るべきではないか。

拡大日韓共同宣言に署名し、握手する小渕首相(右)と金大中大統領=1998年10月8日、東京・元赤坂の迎賓館で

 日本においては戦前日本が朝鮮半島に多大の損害と苦痛を与えたことに真摯に向き合い、未だ民主主義国としても先進国としても若い韓国への思いやりの気持ちを忘れてはならない。韓国も対外政策を世論の流れに任せるのではなく、当事者意識を取り戻さなければなるまい。そして、日韓両国政府間で幾つかの了解を作るべきだ。

 第一に対北朝鮮問題への共同対処や東アジアの安全保障のあり方、自由貿易の一層の拡大など日韓両国の共同利益は大きいという認識の共有であり、それを各々の国内で積極的に発信するべきだ。

 第二に、日韓の重大問題については、公開の論争をする前にまず両国政府間で静かに意思疎通し協議することの確認だ。こうすることにより良好な関係を維持するために不可欠の要素である相互への信頼を徐々に回復していく事が可能となるだろう。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事館総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー。2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。著書に『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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