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田中均氏が正念場に来た日本外交へ直言する

対立を深める日韓、停滞する日朝、北方領土交渉で揺れ動く日ロ、そして中国との関係…

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

北朝鮮非核化問題、拉致問題を前進させるには

 大きな絵を描かねばなるまい。拉致問題を前進させ解決するためには核問題の前進が不可欠だ。これまでの経験からして、日本の要求がどれほど正当であるにしろ、北朝鮮側に提起するだけでは問題解決に至らないことは明らかだ。拉致問題解決が北朝鮮の利益だという枠組みを作らない限り、北朝鮮のような国は動かない。

 日本の梃子は経済協力であり、強力な米国との同盟関係だ。日本が経済協力を提供できるのは日朝国交正常化の後であり、正常化のためには核問題や拉致問題は解決されていなければならない。そして昨年6月12日の米朝首脳会談で北朝鮮への安全の提供の見返りに完全な非核化が約束されているところ、日本の国益から考えても核問題の進捗の流れの中で拉致問題の前進をはかるというシナリオしか考えられない。

 従って拉致問題の解決のためにも、そして日本の重要な安全保障利益を担保するうえでも非核化を実現することが急務だ。

 今日、米朝間で協議は停滞しているようだ。問題を打開していく鍵は一方では北朝鮮の非核化、一方では終戦宣言、停戦合意を平和協定へ転化する事、そして関係正常化に向けた詳細な段取りを合意する事なのだろう。そのような実務的作業が先行しない限り、二回目の首脳会談は何ら意味がない。

拡大シンガポールで会談するトランプ米大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=朝鮮中央通信が2018年6月13日に配信

 ただこのような詳細な段取りは米国だけで出来るものではない。非核化について検証のあり方や費用分担、終戦宣言や平和協定の地域安全保障へのインプリケーションなど韓国、日本、中国といった国々との協議が必要となる。

 日本は知恵を出し、能動的に段取り作りに参画し米国を支援していくべきではないか。能動的に作業に参画する事によって初めて日本としての発言権を確保できる。それが北朝鮮に対する梃子にもなる。同時に日本は平壌に連絡事務所を作り、拉致の事実関係の究明を進めていくべきだ。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中央新書ラクレ、2019年11月10日刊行予定)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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