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拡大香ばしさが口いっぱいに広がるお茶の葉サラダ(写真はいずれも筆者撮影)

 夕暮れ時、高田馬場駅に降り立つと、繁華街へと出向く人々の群れから「どこに飲みにいこっか?」と楽しげな会話が聞こえてくる。駅周辺では日本の居酒屋だけではなく、各国の言葉で書かれた看板や国旗が目にとまる。とりわけミャンマー料理店が多く軒を連ねているこの辺りは、いつしか「リトル・ヤンゴン」と呼ばれるようになっていた。この日は線路をなぞるように伸びるにぎやかな商店街に店を構える、「Swe Myanmar(スィゥミャンマー)」を訪ねた。

拡大仕事帰りの人々から、飲み会に行く学生たち、親子連れまで、皆楽しげに商店街を行き来していた

 「いらっしゃい」と和やかな笑顔で出迎えてくれたのは、オーナーのタンスエさん(57)だ。キッチンではちょうど、妻のタンタン・ジャインさん(55)が料理の仕込みをしている最中だった。家庭的な温かみのある店内は、すでに香ばしいバターやスープの香りがいっぱいに漂っていた。

拡大タンスエさん(左)とタンタン・ジャインさん(右)。お二人の笑顔にまた会いたい、と常連になったお客さんもいる

前菜として人気の「お茶の葉サラダ」

 まずテーブルに運んで頂いたのは、前菜として人気の高い「お茶の葉サラダ」だ。お茶の葉を漬物にして、色とりどりの豆の揚げ物と一緒に和えたものだ。小エビとナッツの風味が口いっぱいに広がり、かりっとした豆の食べ応えと、しっとりとしたお茶の葉の食感が食欲をそそる。一緒に頂いたお豆腐は、日本で慣れ親しんできたものとは一味違う。「ミャンマーでは大豆ではなく、ひよこ豆を使うのが一般的なんですよ」。お口に合いますか?と気を配りながら、タンスエさんは豆腐のコロッケや揚げ物を次々と運んでくれた。

拡大食欲をそそる揚げ物の盛り合わせ

 メインディッシュはミャンマー風の炊き込みご飯である「ダンパウ」だ。バターなどで味付けしたご飯の上に、じっくりと煮込んだ鶏肉がどんと載せられている。見た目は豪快だが、肉は力を入れなくてもほぐれるほど柔らかく、ご飯もグリーンピースやレーズンなどが混ぜられ、細やかに味付けられている。ここのダンパウが食べたい、とわざわざ遠方から訪ねてくるお客さんもいるのだという。

拡大出来立てのダンバウをタンタン・ジャインさんが運んでくれた

拡大ソースとバターの香りがいっぱいに凝縮されたダンバウ

 初めて来たらしいお客さんに、流ちょうな日本語でメニューを説明している二人の姿は、来日してからの長い年月を思わせた。今に至るまでの、険しい道のりを伺った。


筆者

安田菜津紀

安田菜津紀(やすだ・なつき) フォトジャーナリスト

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。写真絵本に『それでも、海へ 陸前高田に生きる』(ポプラ社)、著書に『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』(新潮社)。『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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