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受け身の安倍政権に活路はあるか? 野党は?

不透明極まりない2019年の政治。希望は多様化が進む社会の側にある

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

高揚感が漂った2018年の年頭挨拶

 昨年は前年(17年)の10月に衆院選があったため、国政選挙がないことがほぼ確実な一年であった。その意味で、政権としてはゆったりと政策を構想できる一年になるはずであった。

 振り返れば17年は、通常国会の会期中に森友・加計学園問題が噴出、国会審議は荒れに荒れた。これをなんとかしのぎ、秋の衆院選で自民、公明の与党は圧勝したのだが、総選挙にあたって「人づくり革命」と「働き方改革」を掲げていた政権は、そこから新しい政策を打ち出していくものと受け止められた。政権は自信を持って新年を迎えたのである。

 「満を持した」ともいえる政権の姿勢は、安倍首相の2018年の年頭挨拶にはっきり現れている。

 「本年は、明治維新から、150年の節目の年です」と言う首相は、「高い志と熱意を持ち、より多くの人たちの心を動かすことができれば、どんなに弱い立場にある者でも、成し遂げることができる」という津田梅子の言葉を引き、「150年前、明治日本の新たな国創りは、植民地支配の波がアジアに押し寄せる、その大きな危機感と共に、スタートしました。国難とも呼ぶべき危機を克服するため、近代化を一気に推し進める。その原動力となったのは、一人ひとりの日本人です。これまでの身分制を廃し、すべての日本人を従来の制度や慣習から解き放つ。あらゆる日本人の力を結集することで、日本は独立を守り抜きました」と述べた。

 語調は強く、高揚感が漂う。ただ、入れ込んでいる分だけ、どこかポエムに近づく調子の文章である。

新しさもなければ、ポエムも消えた

中小企業の採用を支援するため開かれた若者を対象にする合同面接会=2018年7月9日、千葉市中央区 
拡大中小企業の採用を支援するため開かれた若者を対象にする合同面接会=2018年7月9日、千葉市中央区
 これに対して、今年の年頭挨拶はどうか。一言でいって、ポエムというより散文的である。

 「昨年は、全国各地で大きな自然災害が相次ぎました。被災者の皆様が一日でも早く心安らぐ生活を取り戻せるよう、政府一丸となって復興を進めてまいります。平成はバブルとともに始まり、経済はその後、長いデフレに突入しました。失われた20年、就職氷河期の到来、未曽有の自然災害。人口が減少する社会は成長できない。『諦め』という名の壁が日本を覆っていました。私たちは、この壁に挑みました。6年が経ち、経済は成長し、若者たちの就職率は過去最高水準です。この春の中小企業の皆さんの賃上げ率は20年間で最高となりました。生産農業所得はこの19年間で最も高くなっています」

 要は、災害への対応、経済成長、雇用確保といった通常の政策の成果について触れているに過ぎない。新しさもなければ、ポエムも消えたのが、今年の特徴なのである。

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筆者

牧原出

牧原出(まきはら・いづる) 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

1967年生まれ。東京大学法学部卒。博士(学術)。東京大学法学部助手、東北大学法学部教授、同大学院法学研究科教授を経て2013年4月から現職。主な著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社)、『権力移行』(NHK出版)など。

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