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受け身の安倍政権に活路はあるか? 野党は?

不透明極まりない2019年の政治。希望は多様化が進む社会の側にある

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

政策構想力の枯渇が始まっている

 なぜ、そうなったのか?

 2018年は、3月1日の朝日新聞のスクープにより、森友学園問題での財務省の公文書改竄(かいざん)が明らかとなり、加計学園問題とともに不祥事が再燃した。17年の国会で参考人として答弁した官邸高官の佐川宣寿氏(財務省)は再度、国会で証人喚問され、柳瀬唯夫氏(経産省)は参考人招致され、答弁の実質上の修正を余儀なくされた。いずれも前後して職を退任せざるをえなくなったのである。

衆院予算委での証人喚問で挙手する佐川宣寿・前国税庁長官=2018年3月27日拡大衆院予算委での証人喚問で挙手する佐川宣寿・前国税庁長官=2018年3月27日
 くわえて、働き方改革法案での厚生労働省のデータ改竄(かいざん)は、秋の臨時国会において入管法改正案での法務省におけるデータミスという形で再現された。各省が政権に都合のよいデータを適当につまんで政策案を作成するといった事態は、すっかり日常の風景となり、安倍政権流の「官邸主導」にとって宿痾(しゅくあ)になりつつある。

 政権は、前年はあった高揚した自信を、保てなくなりつつある。ポエムがなくなった後、政権が繰り返すのは、「一億総活躍社会の本格始動」といった新味のない過去の政策の羅列である。年頭の記者会見で安倍首相は「戦後外交の総決算」を唱えたが、今さら「戦後外交」はないだろうし、「総決算」にしても30年ほど前の中曽根康弘首相の「戦後政治の総決算」の二番煎じの感は否めない。

 つまり、政策に新味がなくなっているのである。政策構想力の枯渇が始まっている。そこから浮かぶのは、受け身の政権の姿である。

受け身と守勢に立つ今年の安倍政権

 受け身なのは、官邸だけにとどまらない。官邸を「忖度(そんたく)」する各省は、失態なきよう受動的姿勢に終始し、能動的貢献が期待できないどころか、政権のためにデータの曲解すら無自覚に行っているとも言える。

 内閣支持率浮揚の“切り札”とされる外交にしても、北方領土問題をめぐる日ロ交渉しかり、北朝鮮問題しかり、さらにはトランプ米大統領への対応しかり、いずれも相手次第である。今や世界情勢はきわめて流動的である。そのまま成果を期待できるものではない。

 まとめると、すべてにおいて受け身と守勢に立たざるを得ないのが、安倍政権の今年の特徴なのである。

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筆者

牧原出

牧原出(まきはら・いづる) 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

1967年生まれ。東京大学法学部卒。博士(学術)。東京大学法学部助手、東北大学法学部教授、同大学院法学研究科教授を経て2013年4月から現職。主な著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社)、『権力移行』(NHK出版)など。

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