山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ゴーン氏は「フェニキア商人」?労組の突き上げでルノーも窮地に
カルロス・ゴーン(64)が東京地裁に勾留理由開示手続きで出廷したニュースはフランスでも大々的に報道された。特に長期刑務所生活を物語る頬のこけたイラストは、主要日刊紙「フィガロ」が一面で掲載したのをはじめ、全メディアが一斉に報道した。その一方で、ゴーンが所得税の申告をオランダで行っていたことなども暴露され、地に堕(お)ちたカリスマの復活は、事実上、困難になりつつある。
これまでフランス側の公式見解は「推定無罪」、つまり有罪判決が下されるまでは「無罪」との法定上の原則に従って、ルノーもゴーン社長の解任は行っていない。メディアも敬称を付けてきた(もっとも、ゴーンは有名人。俳優やタレントなどと同様、敬称なしの報道も少なくない)。
ルノー側はまた、解任しない理由として、「ゴーン氏の罪状の詳細が不明」としてきた。しかし、今回の勾留手続き開示により、直接の理由として「海外逃亡の可能性」と「証拠隠滅」のほかに、金融商品取引法違反容疑や特別背任容疑などの内容が詳細に明らかにされたことにより、この理由が成立しなくなった。
くわえてゴーン個人の所得税、及び日産・ルノーの「アライアンス」としての会社組織の税申告地がオランダ・アムステルダムであることが、「リベラシオン」などの仏メディアによって報道された。これを受け、ルメール財務相がルノーに詳細な報告を要請したほか、労働組合が問題視したことで、「ゴーン事件」は本国フランスでも新たな局面を迎えている。
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