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フランスでも新たな局面を迎えた「ゴーン事件」

ゴーン氏は「フェニキア商人」?労組の突き上げでルノーも窮地に

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

「フェニキア商人」の血を引くゴーン氏

 「リベラシオン」が9日の電子版で報じたところによると、ゴーンが所得税の申告地をフランスからオランダ・アムステルダムに変更したのは2012年。日産・ルノーの「アライアンス」は会社組織として、すでに2002年から同地を税申告地にしていたという。

 なぜか?

 答えは簡単だ。フランスには、高額所得者に対する富裕税(ISF)が存在するが、オランダには存在しないからだ。まさに「フェニキア商人」の血を引くゴーン氏の面目躍如といったところだ。

 ただ、オランダで居住者の資格を得るには、一年のうち183日在住する必要がある。日産とルノーの社長を兼務し、日本やフランスなどを飛び回っていたゴーンが、どうやってこの条件を満たしていたのかは謎だが……。

 実はゴーンはフランス・レバノン・ブラジルの「三重国籍」を持つ。両親はレバノン人なのでレバノン国籍。生まれたのはブラジルなのでブラジル国籍。高校時代からフランスに留学し、理工科系の最優秀校である理工科学校(ポリテクニック)と同校の上位数人が進学を許可される高等鉱山学校(MINE)を卒業後、フランス国籍を取得した。東京地裁に、駐日フランス大使、レバノン大使、ブラジルの外交官が「同国人保護」の資格で出席したのはそのためだ。

事業欲旺盛、金銭に貪欲

ゴーン容疑者が勾留されている東京拘置所から出るレバノン大使館の車両=2019年1月11日、東京都葛飾区拡大ゴーン容疑者が勾留されている東京拘置所から出るレバノン大使館の車両=2019年1月11日、東京都葛飾区
 ゴーン一族の生地レバノンは、紀元前に地中海全域を制覇し、海上貿易で活躍したフェニキアとほぼ領地が重なる。そのせいか、レバノン人には商才のある人が多い。ゴーンの祖父も若くしてブラジルに渡り、食品会社などを手広く経営した成功者だ。その息子であるゴーンの父親も、その事業を引き継いでいる。

 ゴーンが2歳の時に病気になったので、レバノン出身の母親はゴーンが6歳になるとレバノン・ベイルートに引き上げ、フランス系のカトリックの学校に入れた。その後、フランスに留学したゴーンは当初、高等商業専門学校(HEC)を目指していた。「事業で成功した従兄が卒業したから」と、以前インタビューした時、筆者に打ち明けた。HECもエリート校だが、理数科系の成績が抜群だったので、教師がポリテクニックを勧めた、とも言っていた。

 ゴーンは東京地裁での人定尋問で、「カルロス・ゴーン・ビシャラ」と祖父のレバノンの名字を入れた正式な本名を名乗った。言ってみれば、ゴーンには「フェニキア商人」の血が脈々と流れているのである。

 フェニキア商人は事業の感覚に優れていただけではなく、特に、金融関係で抜群の能力を発揮したとされる。「ロスチャイルドやロックフェラー以上」との評判さえある。言い換えれば、金銭に関して、かなり貪欲(どんよく)である、ということだ。


筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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