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フランスでも新たな局面を迎えた「ゴーン事件」

ゴーン氏は「フェニキア商人」?労組の突き上げでルノーも窮地に

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

所得税関係は「問題なし」だったが……

 ところで、ゴーン事件が発生した時点で、フランス当局もゴーンの所得税関係などを調査している。ルメール経済相は即、「問題なし」と発表したが、実際は、税当局が調査した結果、フランスで2012年以降の申告がなかったということに過ぎない。

 フランスの場合、富裕税が存在することもあり、高額所所得者が外国に居住地を移住しているケースが多い。大企業のトップをはじめ、スポーツ選手や俳優など枚挙にいとまがない。「フランス人はフランスで税の申告をするべきだ」(ルメール経済相)といった当たり前のことが、今さらながらに主張されているゆえんだ。

突き上げを強める労働組合 

 さらに、ゴーンにとって厳しいのは、ルノーに対する労働組合の突き上げだ。

 フランスの場合、労組は企業単位ではなく、全国単位、職種別で所属する。ルノーの主要労組は、共産党系の労働総同盟(CGT)に加盟している。CGTはかつては「泣く子も黙るCGT」と言われたほど、戦闘力を有していた。

パリ郊外にあるルノー本社=2018年11月20日、ブーローニュ・ビヤンクール拡大パリ郊外にあるルノー本社=2018年11月20日、ブーローニュ・ビヤンクール
 1996年まで、国営企業で車メーカーとして工場部門の多いルノーは、「CGT、イコール、ルノー」という感じで、労組の力が極めて強かった。最近こそ、共産党の衰退や、いまや労組と無関係の「黄色いベスト」などの無党派に押されて、かつての迫力は失われてはいるものの、無視できない存在だ。

 その労組が何度も、書面や口頭で「トップの交代はあるのかないのか」などの質問を経営陣に突き付けており、「いまだに回答がない」(ファビアン・ガシェ ルノーCGT中央代表)と苛立ちを募らせている。労組代表は、所得税問題でも早速、経済省とルノーの経営陣に質問状を送った。

 ルノーのもう一つの強力労組、社会党系の「労働者の力」(FO)派も、「事態を明白にする時がきた」(マリエット・リ代表)と指摘している。

 さらにルノーの管理職組合(CFE-CGC)も、「ゴーン氏の功罪とは無関係に、日産とのアライアンスを見直す時期だ」(ブルノ・アジエール代表)と述べるなど、各種労組の声が強くなりつつある。

 ただ、ルノーの工場では現在、日産の小型車ミクラを年間14万台製造しており、正規、不正規4000人の従業員が働いている。おいそれとは見直せない状況でもある。日産がルノーに対して強気なゆえんでもある。


筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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