元徴用工判決、レーダー照射問題、「和解・癒やし財団」解散……関係悪化は深刻だが
2019年01月15日
「激しさを増す韓日の葛藤。その行く先は?(上)」に引き続き、葛藤が激しさを増す韓日関係について論じたい。今回は韓国の対日本政策から話を始める。
韓国の戦略的な立場から見れば、対日政策は北朝鮮の非核化問題、さらに東北アジア問題と深い関連性があり、その方向をどう設定するかは非常に重要である。とりわけ、韓国が北朝鮮の非核化を促進する役割を果たし、東北アジアに新しい秩序を作るためには、対日政策のビジョンを明確に確立する必要がある。
ただ、韓国内の現状を見ると、安倍晋三総理の理念的な指向を憂慮して、ビジョンの提示は「ポスト安倍」まで待つほうがいいという主張が多いのも事実だ。しかし、保守化が定着しつつあると見られる日本では、どの政治家が「ポスト安倍」を担おうとも、安倍政権の政策的な方向性が維持される公算が大きい。
そうであるならば、むしろ保守右派の象徴である安倍総理と交渉し、妥協の可能性を探ることが、対日政策の成果を出すためには有効ではないか。文在寅政権は日本との協力を活性化し、外交の選択肢を拡大するべきであろう。
文在寅政権の発足以後、韓日関係は両国固有の問題というより、北朝鮮の非核化、さらに東北アジア秩序を視野に入れて、政策の優先順位が決められたため、韓日関係はそれほど悪くはなかった。南北関係の進展に伴い、韓日両国政府の交流も活発になった。すなわち、北朝鮮問題をめぐり、両国首脳間の協力の動きが活発化したのである。
問題は、徴用工問題の拡大により、韓日関係が新しい対立の段階に入ったことだ。厄介なことに、両国政府がかつてのように、「歴史問題」などの懸案を積極的に解決しようとする姿勢を示さなくなっているため、韓日関係はより一層悪化する可能性が高まった。
特に安倍総理は、過去の歴史問題について、これ以上の反省と謝罪はしないという立場を明確にしている。日本の政界の大勢も韓国との協力に不信感を抱いている。日本政府の「インド太平洋戦略」から韓国が抜け落ち、日本外務省のホームページで「韓国は民主主義と市場経済を共有する国家」という文章が削除された後、何年も復旧していないのは、そうした空気を象徴的に示す。
結局のところ、韓日関係が以前から変化するなか、対日政策においても発想の転換が求められているのだ。
韓国外交は今、米中の葛藤に強い憂慮を示し、それへの対応に悩んでいる。その結果、東北アジアにおける日本の役割を軽視する傾向が見られる。また、文在寅政権は対日政策で「ツートラック政策」を前面に打ち出しているが、東北アジア政策のビジョンとの整合性は取れていない。
まずは、韓国にとって中国や日本の戦略的価値は何なのか、韓国の東北アジア政策における優先的価値は何かについて、冷徹な判断をすることが必要だ。そして、それをベースに東北アジアの枠組みを作るための「グランド・デザイン」を提示しなければならない。
今後、韓国は対中、対日政策について、北朝鮮の非核化にからむ東北アジア秩序の変化の観点からだけ考えるのではなく、米中の対立というより大きな枠組みから構築する必要がある。具体的に言えば、中国や日本を、「脱冷戦」の新しい東北アジア秩序をつくるパートナーとしてとらえる発想が大切になるだろう。
韓国外交が何を優先するべきか考えたとき、韓日関係の「葛藤管理」は必須であろう。なにより韓日協力は韓国にとって「戦略的必要性」を持つからだ。中国やアメリカとの関係で外交的均衡を維持するためにも、韓日協力の重要度は高い。
パンドラの箱が開き、混乱に見舞われた後にも「希望」が残っていたように、葛藤する韓日関係の末に「戦略的な協力」という希望が残っていると信じたい。今は、韓国も日本も国内政治と国民感情が先立ち、こうした重要な国益に目を向けることができないが、 韓日関係を管理することは、韓国外交の選択肢を高めることであり、国際社会で“戦略的パートナー”を拡大することに他ならない。
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