陳昌洙(ジンチャンス) 世宗研究所首席研究委員・日本研究センター長
1961年、韓国生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士過程修了(政治学博士)。96年から現職。北海道大学特任教授(2011年)、現代日本学会会長(2013年)、世宗研究所所長(2015~18年)などを歴任。現在は南北首脳会談諮問議員も務めている。日韓関係や日本政治、東北アジア国際関係など関する著作や論文多数。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
元徴用工判決、レーダー照射問題、「和解・癒やし財団」解散……関係悪化は深刻だが
韓国が、東北アジアで影響力を拡大して新しい平和体制を定着させるためには、中国が北朝鮮を利用してアメリカを牽制(けんせい)しようとする動きを警戒しなければならない。同時に、日本がアメリカを通じて冷戦論理を拡大するということもあってはならない。
韓国外交は今、米中の葛藤に強い憂慮を示し、それへの対応に悩んでいる。その結果、東北アジアにおける日本の役割を軽視する傾向が見られる。また、文在寅政権は対日政策で「ツートラック政策」を前面に打ち出しているが、東北アジア政策のビジョンとの整合性は取れていない。
まずは、韓国にとって中国や日本の戦略的価値は何なのか、韓国の東北アジア政策における優先的価値は何かについて、冷徹な判断をすることが必要だ。そして、それをベースに東北アジアの枠組みを作るための「グランド・デザイン」を提示しなければならない。
今後、韓国は対中、対日政策について、北朝鮮の非核化にからむ東北アジア秩序の変化の観点からだけ考えるのではなく、米中の対立というより大きな枠組みから構築する必要がある。具体的に言えば、中国や日本を、「脱冷戦」の新しい東北アジア秩序をつくるパートナーとしてとらえる発想が大切になるだろう。
韓国外交が何を優先するべきか考えたとき、韓日関係の「葛藤管理」は必須であろう。なにより韓日協力は韓国にとって「戦略的必要性」を持つからだ。中国やアメリカとの関係で外交的均衡を維持するためにも、韓日協力の重要度は高い。
パンドラの箱が開き、混乱に見舞われた後にも「希望」が残っていたように、葛藤する韓日関係の末に「戦略的な協力」という希望が残っていると信じたい。今は、韓国も日本も国内政治と国民感情が先立ち、こうした重要な国益に目を向けることができないが、 韓日関係を管理することは、韓国外交の選択肢を高めることであり、国際社会で“戦略的パートナー”を拡大することに他ならない。
韓日関係改善の糸口をつかむためには、
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