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県民投票の会代表がハンストで問う「民主主義」

10万人超の署名を集めた責任。「もう体を張って、アピールするしかありません」

岩崎賢一 朝日新聞記者

「5市の市長や議員が彼をハンストに追い込んだ」

 このような状況について、沖縄の地域研究や国内外の住民投票を研究してきた政治学者の江上能義さん(72)は「県民投票の実施の拒否は、民主主義の根幹にかかわる問題です」と述べ、危機感をあらわにしている(江上さんのインタビュー記事『沖縄県民投票「これはもう民主主義を巡る闘いだ」』参照)。

 「これだけ多くの有権者が投票権を行使できないことで、署名してくれた10万人に申し訳ないと感じているのでしょう。不条理にぶち当たって、色々な努力をしてきたが、首長が翻意しない。彼(元山さん)も最後の誠意としてハンストをするしかなかったのだと思います」

拡大不参加を表明した5市での投票実施を求め、ハンガーストライキを始めた「『辺野古』県民投票の会」の元山仁士郎代表。応援する人たちも集まった=2019年1月15日、沖縄県宜野湾市

 江上さんが、沖縄を追い込む政府の手法について厳しい言い方をするのには、いくつかの理由がある。

 一つは、住民が意思表示をする手段を封じる罪の大きさだ。研究してきたスペインのカタルーニャ独立問題では、州政府幹部が中央政府に拘束され、なかなか裁判も開かれなかったため、獄中でハンストを始めたが、江上さんには今回のハンストが重なって見えるという。

 「カタルーニャでも、ハンストを始めた理由は、審理をしてくれというものでした。それを思い出しました。アピールする術も、表現の自由もない。元山さんも好き好んでハンストをしているわけではないでしょう。10万人の署名を集めた責任を取らざるを得ないような状況に追い込んでしまった。5市の議員や市長たちは、考えないといけません」

拡大支持者らと選挙結果を喜ぶ、独立派政党「ともにカタルーニャ」の候補者ら=2017年12月21日、バルセロナ
拡大スペインのカタルーニャ州議会前で解任された州幹部の勾留に反発する人たち=2017年11月2日、バルセロナ

 もう一つは「カネ」で言うことを聞かせようという政府の姿勢だ。政府は2019年度の沖縄振興費として3010億円の予算案を組んだが、県を通さずに直接市町村を支援する新制度を設け、30億円を計上した。一方、政府から県への一括交付金は1093億円で、前年度から94億円を減らした。

 「自民党国会議員の指南や政府が直接市町村に交付する沖縄振興費のことを気にして(5市の首長や議員は)こうなったのでしょう」

拡大沖縄県を通さず市町村に支出できる制度を盛り込んだ沖縄振興費の予算案を伝える記事=2018年12月22日、朝日新聞朝刊

 この問題の出口はあるのか、聞いてみた。

 「これをどう考えるか、沖縄県全体で考えるべき問題です。決して元山さんが無謀なことをやっているわけではありません。県民一人一人が考えないといけないことです。みんなで議論すべきことなのです。これまでの沖縄県民が示してきた民意を考えれば、この行動を『バカなことをしている』とは決して言えないですよね」

 県民の中には、あきらめがあったり、政府と交渉して取れるものは取っておいた方が得という考えもあったりする。江上さんがここまで厳しく指摘するのは、今回は、間接民主主義を補完する制度として認められた直接民主制を揺るがす事態になっているからだ。

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筆者

岩崎賢一

岩崎賢一(いわさき けんいち) 朝日新聞記者

1990年朝日新聞社入社。くらし編集部、政治部、社会部、生活部、医療グループ、科学医療部などで医療や暮らしを中心に様々なテーマを生活者の視点から取材。テレビ局ディレクター、アピタル編集、連載「患者を生きる」担当を経て、現在はオピニオン編集部で「論座」編集を担当。『プロメテウスの罠~病院、奮戦す』『地域医療ビジョン/地域医療計画ガイドライン』(分担執筆)。 withnewsにも執筆中。

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