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「シリア撤退」宣言で近づくロシアの「勝利」

トランプ大統領の宣言の意図とシリア内戦の行方を探る

六辻彰二 国際政治学者

カショギ事件の余波

 ただし、トランプ大統領が何のきっかけや利益もなしにトルコに譲歩したとは思えない。マティス国防長官らの反対をも押し切って、トランプ氏に「シリア撤退」を決断させた決定的な転機は、ジャマル・カショギ氏の殺害事件だった。

 サウジアラビアの人権状況を批判する論陣を張り、欧米メディアでしばしば取り上げられる著名なジャーナリストだったカショギ氏は、2018年10月にトルコのサウジ総領事館で殺害された。この事件で、サウジアラビアの事実上の最高権力者ムハンマド皇太子の関与をめぐり、サウジ政府は国際的な疑惑と批判を招いたが、その急先鋒となったのが、事件の現場となったトルコだった。

 しかし、トルコ政府のサウジ批判は、人権や言論の自由を尊重しているからではない。国際的なジャーナリスト団体「国境なき記者団」によると、トルコ国内で拘留されているジャーナリストは2018年段階で、世界一の167人にのぼる。

 自らが言論の自由を規制するトルコ政府がカショギ事件の究明に熱心なのは、むしろこれがサウジへの圧力になるからとみた方がよい。

 トルコとサウジアラビアは、アメリカの同盟国という点では共通する。その一方で、

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筆者

六辻彰二

六辻彰二(むつじ・しょうじ) 国際政治学者

1972年生まれ。博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学、日本大学などで教鞭をとる。アフリカを中心に世界情勢を幅広く研究。著書に『世界の独裁者 現代最凶の20人』(幻冬舎)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、共著に『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)など。その他、論文多数。Yahoo! ニュース「個人」オーサー、NEWSWEEK日本版コラムニスト。

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