ニッポンの「食の主権と安全」が売られる!
知らないではすまされない。「食への意識」を国民は高めよ
堤未果 国際ジャーナリスト

TPP11発効後、初めての閣僚級委員会に集まった参加国閣僚と握手する安倍晋三首相=2019年1月19日、東京都内のホテル
テレビ・新聞はTPP11に期待するが……
2018年は、アメリカを除く11カ国の「TPP11(環太平洋連携協定)」発効と共に幕を下ろした。 WTOより強制力のあるTPP、ウォール街の元同僚達が「グローバル企業の夢」と呼んだこの協定が、トランプ大統領によるアメリカ離脱後に、日本政府の旗振りで、ついに実現することになる。
この協定の誕生に期待を寄せる日本国内のテレビ・新聞は、今も「関税」分野を中心に、「自由で公正なルール構築」「巨大な経済効果」などと肯定的な論調だ。実際、マレーシアのコンビニへの外資規制緩和や海外における知財保護強化など、TPP11が財界にもたらす恩恵は少なくない。
だが本当にそれだけだろうか?
実は重要な「非関税部門」
トランプ大統領によるアメリカの離脱以降、このテーマに関する報道自体が激減し、国民の関心は一気に薄れていった。まるで一枚のすりガラスに隔てられているかのように、この協定の発効に伴う銀行や投資家、グローバル企業の熱狂は、一般国民の住む世界には決して伝わってこない。そして、この協定の主目的である「非関税部門」については、もはや話題にすら上がらないのだ。
この協定について、官邸ホームページの説明を見てみよう。
関税だけでなく、サービスや投資自由化を進め、知的財産、金融サービス、電子商取引、国有企業の規律など、幅広い分野で21世紀型ルールを構築するもの
実は今後、長期に渡り、社会や暮らし、国民の命や健康、子供たちの未来や社会のあり方に大きく影響するのは、ここに記されている「非関税分野」の方だ。
国民が目を向けるべき重要なことは、しばしばニュースが取りこぼした残骸の中にある。