ドクターストップで105時間で終了。元山さん「県議会の皆様の動きに賭けたい」
2019年01月20日
「今日から宜野湾市役所前でハンガーストライキやってます。宜野湾市長、沖縄市長、うるま市長、宮古島市長、石垣市長が県民投票への参加を表明するまで水だけで頑張ります」
自らのツイッターにこう書き込み、2019年1月15日午前8時に始まった「『辺野古』県民投票の会」代表の大学院生によるハンストは、19日午後5時ごろ、5市長の翻意を見ることなく、ドクターストップによって105時間で終了した。
ハンストという手段で住民の投票権を奪う権力に立ち向かった大学院生の行為は、無駄だったのか。それとも5市の首長や議員の心を動かすのか。
2月14日の告示が迫る中、この状況を横目で眺めていた政治家たちの一挙手一投足を、サイレントマジョリティーは見つめている。
ハンストをしていた元山仁士郎さん(27)は、1月19日午後6時ごろ、ツイッターにこう書き込んだ。
「本日(19日)17時、ハンガーストライキ開始から105時間が経過したところでドクターストップがかかりました。親、会の役員、周りの意向を受け、ここでやめる決断をしたいと思います。市長の態度が変わらない中、県議会の皆様の動きに賭けたいと思います。見守っていただき、ありがとうございました」
水しか飲まないという条件下で始めたハンストは、105時間続いた。
その10分後のツイートでは、こうお礼を述べている。
「沖縄、日本、海外からたくさんの方々に支えられ、涙が溢れています。ありがとうございました」
どちらのツイートも、血圧測定や支えられながら歩いている姿の写真が添えられている。
しかし、地元の新聞社のネットニュースやSNSで国内外に状況を伝える記事や書き込みが拡散されると、在京テレビ局などの番組が取材に訪れるようになった。住民も駆け付け、時には人だかりができるようにもなった。支援の輪も広まっていった。
ただ、降雨もあり、体力を失っていく。テントの中で寝袋に入ってハンストを続ける時間も長くなっていく。サポートを始めた医療関係者からは、水だけでなく、塩も摂取するように指示が入った。
体の中の塩分濃度が下がると、めまいやふらつきが起こるほか、塩分濃度を体が自然と調整しようとして水分を多く排出しようとするため、脱水症状やけいれんを起こしやすくなるからだ。
情報が拡散していく中、宜野湾市役所前には、毎日午後3時ごろ、右翼の街宣車も来るようになった。
元山さんは、ツイッターでこうもつぶやいている。
「この右翼の方々が沖縄のどこの市町村に住んでるかは分からないけど、この人たちが県民投票で大事な意思表示ができるためにもがんばりたいと思います」(17日)
私がインタビューした1月4日の時(『「辺野古」県民投票の会代表の元山さんに聞く』参照)、元山さんは辺野古移設に対する個人の意見は別にして、「もし賛成の方が多ければ、日本政府は太鼓判を得たとして、工事をどんどん進めていくこととなるでしょう。反対が多く出たら普天間基地の移設先の選択肢の模索を、もう一度真剣にやらないといけないと思います」と話していた。
様々な立場の人が参加し、賛否を示して議論し、深めることが大切だと説いていた。
ツイッターでは、ハンストを巡るつぶやきも様々だ。
「仁士郎の頑張りで県民投票が全国ニュースにもなったし注目も集まった。ありがとうーー」
「本当にお疲れさまでした。悔しいだろうけど、心を動かされた人は少なくないと思います。まずはゆっくり休んで体力の回復につとめて下さい。」
このような励ましのつぶやきが多いが、厳しい見方をするつぶやきもある。
105時間でドクターストップによるハンスト中止について、「早くない?」というように揶揄する短文投稿も目立つ。このほか、ハンストを「感動ポルノ」と見ているものもあった。
また、手段が誤っていると主張する書き込みもあった。市長のリコールや選挙で主張に合う首長を選ぶのが法治国家のやることであるという意見だ。
ハンストによって、県民投票を巡る空気は変わってきたのか。
18日午前、首相官邸。菅義偉官房長官が定例記者会見で、5市の県民投票不参加に抗議して元山さんがハンストをしていることに対する政府の認識を質問される場面があった(この動画の最後の部分)。
菅官房長官は一言。
「その方に聞いて下さい」
このやりとりを知った元山さんは、怒りを込めてこうツイートした。
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