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柳川喜郎前御嵩町長から玉城デニー知事へ

住民投票に賛成反対と棄権以外の選択などない。ぶれずに進むべきだ

石川智也 朝日新聞記者

県は直接投票事務を。市民はどんどん提訴を

――このまま一部自治体が参加を拒めば、仮に反対多数となっても投票結果の正統性を損ねることになりかねません。移設推進派は必ず「県民全体の民意とは言えない」と主張するでしょう。

 県は市長への説得を続け、それでもやむを得ない場合は直接投票事務を行う方法を検討した方がよい。すでに動きがあるが、市民としては行政訴訟や損害賠償訴訟をどんどん起こすべきだ。投票日に間に合わせるためには仮処分しかないが、本訴訟も時間はかかっても判例をつくるという意義がある。

――賛成反対の二択では民意をすくい取れないとして、「どちらとも言えない」「やむを得ない」を選択肢に入れるべきだという主張があります。投票不参加を決めたうるま市長があらためて提案したほか、いわゆる「リベラル」側からも、行き詰まりを招いたのは二択方式を知事と与党が強引に進めたからだという声が出ています。

 「やむを得ない」は明らかに賛成でしょう。「どちらとも言えない」は棄権と同じ。判断できないなら棄権するか白票を投じてもらい、それもその人の意思と見なすしかない。

 条例に基づいた住民投票はただの意識調査や人気投票とは違う。何度も言うが、法的な拘束力を持つ地域の決断だ。二択がおかしいという議論は、明らかに住民投票を議会より一段格下に見る思想からきている。議決で賛成反対と棄権以外の選択などない。

 曖昧な選択肢を入れないことで投票率が下がってしまったとしたら、それはそれでひとつの結果だ。

 そういう意味では、通常の選挙で設けられていない最低投票率を住民投票にだけ採り入れるのもおかしい。人を選ぶ選挙ではそんな設定はない。投票率20%台で当選した首長は全国にごろごろいる。それでも、その地位に正統性がないなどという者はいない。住民投票にだけどっちつかずの選択肢を入れたり厳しい要件を課したりするのは、民主主義という観点からは理屈にあわない。

 御嵩の住民投票も、産廃計画への賛否を二択で明確に問うた。投票前から、僕は「町民が出した結果に従う」と明言していた。「どちらとも言えないという人はどうすればいいのか」と聞かれたが、「そんな選択肢はない。申し訳ないが棄権して下さい」と言った。

 沖縄で二択だ四択だとまた蒸し返すのは、住民投票を否定するためのイチャモンに近い。

 玉城知事はぶれるべきではない。

拡大記者の質問にこたえる沖縄県の玉城デニー知事=2018年12月27日、沖縄県庁

〈御嵩町の産廃処分場問題〉 岐阜県内の産廃業者が御嵩町の木曽川沿いに「東洋一の規模」という87万立法メートルの最終処分場を計画。町は1995年2月、業者から協力金35億円を受け取る秘密協定を交わしたが、同年4月に町長に初当選した柳川氏は、計画地が水源に近いことや協定締結の経緯への不審から県に許可手続きの一時凍結を要望した。翌96年10月、柳川氏は自宅前で2人組に襲撃され意識不明の重傷を負った。町は97年6月、処分場建設を問う全国初の住民投票を実施。反対が79・6%を占めた。業者は2008年に計画取り下げを表明し、予定地は県に寄付された。町長襲撃事件後、岐阜県警は柳川氏の電話を盗聴した容疑で右翼団体幹部ら計11人を逮捕。うち一人は公判で「町長の失脚を狙った」と証言したが、襲撃への関与は全員が否定し、事件は2011年に公訴時効となった。

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。岐阜総局などを経て社会部でメディアや教育、原発など担当した後、2018年から特別報道部記者、2019年9月からデジタル研修中。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学感染症情報分析センターIDIA客員研究員。著書に「それでも日本人は原発を選んだ」(朝日新聞出版、共著)等

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