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県民投票を市長は拒否できるか?あらためて考えた

法治主義、民主主義の国の自治体の首長の義務とは。

米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

市役所前で県民投票実施を訴える人たち=2019年1月9日、沖縄県宮古島市拡大市役所前で県民投票実施を訴える人たち=2019年1月9日、沖縄県宮古島市

 米軍普天間飛行場の辺野古への移転について問う住民投票を2月24日に控え、沖縄県内の沖縄市、宜野湾市、宮古市の各市が県民投票事務を行わないことを表明し、うるま市、石垣市が態度を保留しています。この事態をめぐってはすでにいくつかの解説が出ていますが、地方自治の現場に携わったものとして、また一法律家として、これらの市長は沖縄県県民投票事務の執行を拒否できるのか、あらためて解説させていただきたいと思います。

市町村の投票事務は県からの委託

 まず問題を整理します。「県民投票」は、あくまで広域自治体である県の事務であり、市町村の事務ではありません。ただ、その実施には、市町村単位で管理している選挙人名簿が必要ですし、投票場所は市町村の管理する小学校等を使うことになります。また投票をつつがなく実施するには市町村職員の手を借りざるを得ません。

 そのため、沖縄県の県民投票条例では、

第3条 県民投票に関する事務は、知事が執行する

と規定したうえで、

第13条 第3条に規定する知事の事務のうち、投票資格者名簿の調整、開票及び投票の事務の実施その他の規則で定めるものは、地方自治法第252条の17の2の規定により、市町村が処理することとする。

としています。

 地方自治法を見ると、

第252条の17の2
1 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。
2 前項の条例(同項の規定により都道府県の規則に基づく事務を市町村が処理することとする場合で、同項の条例の定めるところにより、規則に委任して当該事務の範囲を定めるときは、当該規則を含む。以下本節において同じ。)を制定し又は改廃する場合においては、都道府県知事は、あらかじめ、その権限に属する事務の一部を処理し又は処理することとなる市町村の長に協議しなければならない。

となっており、条例によって、県の事務を市町村に委託することの根拠が定められています。これによって、沖縄県県民投票の投票事務は、法律上何の問題もなく、市町村に「委託」されていることことになります。


筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 衆議院議員・弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2022年衆院選に当選(新潟5区)。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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