メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

移民の解禁と満州国の「民族協和」

「多民族」的ネーションの統合の核となる理念が必要だ

柴田哲雄 愛知学院大学准教授

ネーションの統合の核になる理念

 私たちは移民を対等な市民として迎え入れるべきです。そのためには、従来の「単一民族」的ネーションを「多民族」的ネーションに再形成するという新たな課題に取り組まなければならないでしょう。ところで「単一民族」であれ、「多民族」であれ、ネーションの(再)形成に当たっては、統合の核になる理念が必要とされます。私たちは「多民族」的ネーションへの再形成に当たって、一体何をそうした理念とすべきでしょうか。これが本稿のテーマになります。

 従来のケースについて見ることにしましょう。江戸時代まで、士農工商などの身分制度や各地の藩の存在のために、身分や地域ごとにアイデンティティーが異なっていました。しかし明治維新以降、そうした身分制度や各地の藩は解体され、天皇が統合の核になる「象徴(理念を具体的な人物・事物によって置き換えたもの)」とされることによって、「単一民族」的ネーションが形成されることになりました。日本国憲法第一条の、天皇は日本国民統合の「象徴」であるという一節は、端的にそれを示しています。

 今後、私たちが「多民族」的ネーションへの再形成を進めて、改めて統合の核になる理念を定めることになろうと、日本人が依然として圧倒的なマジョリティーである以上、天皇は統合の核になる「象徴」であり続けるでしょう。分かりやすく説明するために、で示すことにしましょう。「単一民族」的ネーションの形成が完全な円の形をとるとすれば、天皇はただ一つしかない中心点になります。一方、「多民族」的ネーションへの再形成は、いわば楕円の形をとることになります。その際、天皇は二つある中心点の一つということになります。こうした図は、「単一民族」的ネーションから「多民族」的ネーションへの再形成を経験した西欧の君主国にも、概ね当てはまることでしょう。 

拡大

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

柴田哲雄

柴田哲雄(しばた・てつお) 愛知学院大学准教授

1969年、名古屋市生まれ。中国留学を経て、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。2002年以来、愛知学院大学教養部に奉職。博士(人間・環境学)を取得し、コロンビア大学東アジア研究所客員研究員を務める。主著に、汪兆銘政権とヴィシー政府を比較研究した『協力・抵抗・沈黙』(成文堂)。中国の亡命団体に関して初めて本格的に論じた『中国民主化・民族運動の現在』(集広舎)。習仲勲・習近平父子の生い立ちから現在に至るまでの思想形成を追究した『習近平の政治思想形成』(彩流社)。原発事故の被災地にゆかりのある「抵抗者」を発掘した『フクシマ・抵抗者たちの近現代史』(彩流社)。汪兆銘と胡耀邦の伝記を通して、中国の上からの民主化の試みと挫折について論じた『汪兆銘と胡耀邦』(彩流社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

柴田哲雄の記事

もっと見る