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興奮しない日韓関係

変わる韓国、変わらぬ日本。「常識の違い」が固定化した今、どう向き合えば良いのか

市川速水 朝日新聞編集委員

「韓国は軍事独裁政権時代とは違う国だ」

 この固定されてしまった「悪いイメージ」の原因となった出来事を挙げるのは簡単なことだろう。昨年の秋以降だけみても、国会議員の竹島上陸、慰安婦問題をめぐる2015年「政府間合意」の事実上の破棄、元徴用工への賠償を認めた判決確定、そして最近の火器管制レーダー照射問題と続けざまに起きている。

 現状では、韓国の立場をある程度理解しようとする韓国通ほど「韓国疲れ」は激しい。どれも日本側から見れば、筋が通っていない、過去の約束を破っている、言い訳がましいと映る。変だ。これでは弁護のしようがない。

 韓国人記者や日韓問題に詳しい韓国人学者にこれら最近の問題について討論しようとすると、あまりにも「日本の常識」とかけ離れ、話がかみ合わないのに驚く。

 日本が「元徴用工を含む請求権問題は、完全かつ最終的に解決済み」という根拠にしている1965年の日韓基本条約・請求権協定については、「あの時、韓国は軍事独裁政権で民主化されていない未熟な国だったから。今は事実上、違う国だ」と言う。

 レーダー問題では「日本はなぜ小さな話で韓国に喧嘩を売ってくるのか」。慰安婦問題の政府間合意は「韓国社会が納得していないのに朴槿恵政権が頭ごなしで決めてしまった」。

 これらの答えは、私が個人的に聞いたもので、韓国政府の説明やメディアの論調とは少し異なるかもしれない。だがそこには、日本からどう見えようと、韓国独自の物差しでものごとを見直そうという風土だと確信せざるを得ない。

価値観の変化に躊躇しない韓国

 特に平成と重なる30年間を振り返ると、日韓両国が別々の価値観で違う道を進んできたことが鮮明になる。

 韓国は、価値観が変わることに躊躇しない。激しい民主化闘争を経て、平成のスタートごろから軍事独裁を放棄して民主政権へとかじを切った。

 金泳三、金大中、盧武鉉、李明博、朴槿恵、文在寅の各大統領とも、苦学、弁護士、ビジネスマン出身、二世といったキャラクターの違いを鮮明に出し、有権者の支持を得た。退任後は大半が在任中の行為を問われ(朴氏は現役中に弾劾された)、自殺した盧武鉉氏のように悲惨な末路をたどった元大統領も多い。大統領選では熱狂的な支持を集めても、当選するとあっという間に風向きが変わって支持率が落ちる。有権者は後悔し、週末ごとに退陣デモが繰り返される構図は定着している。

拡大ソウル中央地裁での論告求刑公判を終え、護送車に向かう李明博元大統領=2018年9月6日、東亜日報提供

 その間、国会議員の女性比率は1990年で日韓とも、約2%と低い水準で肩を並べていたが、伝統的に男尊女卑が激しかった韓国では、国会議員選で比例代表のクオータ(割り当て)制を導入するなど女性の政界進出を後押しし、17%まで上げてきた(日本の衆議院は9%)。司法制度の可視化、性犯罪対策など法制化を次々と進め、「MeToo運動」も激しく広がり、政財界を震撼させている。労働・福祉政策の向上を訴える市民デモは日常化している。

 芸能人、文化人の政治的な発言も世論に大きな影響を与える。日韓外交がこじれても訪日客は増え続け、2018年は753万人と過去最高を記録した。中国からの客に続き、日本が目指す観光立国に大きく貢献している。

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筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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