沢村亙(さわむら・わたる) 朝日新聞論説委員
1986年、朝日新聞社入社。ニューヨーク、ロンドン、パリで特派員勤務。国際報道部長、論説委員、中国・清華大学フェロー、アメリカ総局長などを経て、現在は論説委員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
かみあわない「トランプ流」。ロシア疑惑につのる不安。次々と去る高官たち……
何かと物議を醸し、社会の分断をあおっていると非難されるトランプ大統領だが、「既存のエリート政治」という厚い岩盤に体当たりで挑み、自分が大統領選中に打ち出した政策をひとつひとつ実行に移してきたのも事実である。
その「トランプ流」の歯車がかみあわなくなっているのでは――。そんな指摘が最近、聞かれる。
それが顕著にあらわれたのは、政府閉鎖が始まる少し前の昨年12月11日に、ホワイトハウスの執務室で、民主党のペロシ下院院内総務(当時)、シューマー上院院内総務の民主党の両議会トップと、トランプ氏とがテレビカメラの前で17分間にわたって繰り広げた口げんかである。
「米国の安全を守るために壁が必要」と持論をとうとうと述べたトランプ氏。ペロシ氏が「トランプ・シャットダウン(閉鎖)は避けなければならない」と応じるや、トランプ氏は切れた。「えっ、今なんて言った」と聞き返し、あとは顔を真っ赤にしながらペロシ氏らの発言に細かく反論。最後にはこう大見えを切った。
「国境の安全のためなら、私は誇りをもって政府を閉鎖する」
◆テレビ中継されたホワイトハウスでの「大げんか」
政府閉鎖に突入した場合、「その責任は大統領の提案に耳を貸さない民主党にある」となすりつけることで、トランプ氏は世論を有利に誘導することもできた。
だが、「戦い」が本格的に始まる前から「私が閉鎖する」と大見えを切ったのは、たとえ民主党の重鎮2人を相手に自分が大物であることを支持層にアピールする意図があったとしても、その先のことを考えれば「ディールの達人」らしからぬ戦略的なミスといえた。
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