高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト
英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
2018年12月20日の発生以来、1カ月以上にわたって激しい応酬が続いてきた日韓のレーダー照射問題。この余波で、防衛省は今春予定されていた海上自衛隊の護衛艦「いずも」の韓国派遣中止を検討している。韓国海軍は2月に予定していた幹部の海自基地訪問を延期した。
日韓双方の一部世論が非常に熱くなるなか、筆者が東京特派員を務める英軍事週刊誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』をはじめ、海外メディアはこの問題に当初からあまり関心を寄せていない。「ああ、また日韓がいつものように揉めている」と、国際社会の見方はどこか冷めている。
確かに、日本の防衛省の発表のごとく、韓国海軍の駆逐艦「広開土大王」が海自のP1哨戒機に射撃用の火器管制レーダー(Fire Control Radar, FCR)を照射したならば、現場レベルでは重大な出来事ではある。
FCRは、敵をミサイルや火砲で攻撃する射撃管制システム(Fire Control System, FCS)に情報を送る。それゆえ、FCRを哨戒機に向けることはとても挑発的だ。哨戒機搭載の火力警戒インジケーターが一気にバズられる(=騒ぎ立てられる)事態に陥ってしまうからだ。
ただし、防衛省が公表した海自哨戒機の乗員同士のやりとりでも、韓国軍の駆逐艦の砲は哨戒機に向いていなかったことがわかっている。軍事ジャーナリストの田岡俊次氏も2019年1月21日号のAREAで「『広開土大王』号が艦首の対空ミサイル16発入りの垂直発射機のハッチを開いていない以上、嫌がらせ程度に過ぎず、大局的に見て韓国海軍が日本の哨戒機を撃墜する危険が現実にある状況ではなかった」と指摘している。