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[121]「こころの時代 作家・辺見庸」に共感

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

辺見庸作家・辺見庸

1月15日(火) 午前中「報道特集」の定例会議。午前11時からJOC(日本オリンピック委員会)竹田恒和会長の記者会見。フランス当局の贈賄罪訴追に対する釈明会見のはずだったが、一方的に紙を読み上げてわずか7分で記者たちの質問を受けることなく終了してしまった。一体これは何なんだ。あの加計学園の加計孝太郎理事長だって、しどろもどろになりながらも一応、記者からの質問は受けていた。つまり質問されると困ることがあるという印象を強く残した点で、この会見は大失敗である。記者たちが声をあげて抗議していたが当然である。外国メディアも含めて、記者やカメラの数だって制限されていたなかで開かれた記者会見である。僕らは北朝鮮や中国共産党の記者会見に出ているのではないのだから。7分で会見を打ち切って、どういうリアクションが起こるのかを考えていないのだとしたら、メディアが完全に舐められているということだ。

 2019年に内外で起きることを頭のなかで整理する。昔の映画『ブレードランナー』の時代設定が2019年だった。あれはあの時代では突出してすごい映画だったが、その年が今年だというのは、何やら示唆的である。

 午後2時半過ぎ、カルロス・ゴーン前会長弁護団からの保釈申請が東京地裁によって却下された。追起訴後の長期勾留という様相となってきた。日本の特捜部およびその担当メディアという「ムラ社会」では当たり前のことが、国際環境のもとでは当たり前ではない、むしろ不条理だということがある。僕はゴーンという人に何らシンパシーを抱いたことのない人間だが、日本の司法制度の前近代性については、それなりに考えをもっている。だからいろいろな意味で、この捜査の成り行きに注目せざるを得ないのだ。

 夕方、映画『グリーンブック』をみる。見終わって勇気をもらう。1960年代のアメリカ社会の人種差別を描いているロードムービーであるようでいて、この監督は、今現在の「トランプのアメリカ」の病を撃っているように思う。実在の人物をモデルにしたストーリーなので、このピアニストの演奏(CD)を聴いてみたくなった。

 沖縄の元山仁士郎さんが、今日からハンガーストライキに入った。きのう夜の現地交流会で早稲田の学生たちはこのことを聞かされていたそうだ。元山さんの悲痛な決意のほどを知り、自分に何ができるのかを考える。

肋骨に激痛が…

1月16日(水) 朝の便で北海道の旭川へ。ずいぶん前に約束していた講演会のため。ところが旭川空港が雪のため除雪に手間取り、空港の上空で20分以上旋回する羽目になった。北海道は雪が鬼門だ。久しぶりの冬の旭川。やはり寒い。先週行った沖縄の気温は日向だと25度くらいはあったから、この30度以上の温度差に体が適応できない感じだ。旭川在住の義父宅を訪ねたが留守で、その足で入院中の義母の見舞い。帰り道のその時だった。道路がアイスバーン状態になっていて滑って転んでしまった。からだ右の側面をしたたか打った。まいった。激痛が走ったが、講演の予定時間まであと1時間半しかない。からだをゆっくりと起こして、宿舎に戻り、浴槽にお湯をためて体を横にする。もっとしっかりとした防寒対策をしてくるべきだった。猛省。

 体が痛いが、何とか講演の準備をして会場へと移動。今回、お声がけをいただいた日本経済新聞社O氏と挨拶を交わす。PCのパワーポイントの準備をして午後6時から1時間の講演。時間が全然足りない。まあ、仕方がないか。現状を踏まえた近未来展望なので。でも、

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