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統計の不正が起きた理由と罪の深さ・下

毎月勤労統計の問題を考える

舟岡史雄 信州大学名誉教授

GDPや株式市場に影響も

William Potter/Shutterstock.com拡大William Potter/Shutterstock.com
 毎月勤労統計の調査結果の偏りは、労働行政に対する影響にとどまらない。その結果は景気関連の指標として、国内総生産(GDP)、景気動向指数、月例経済報告に利用されるほか、金融政策の判断資料として活用されている。

 また、あまり詳らかになっていないが、2008年7月に総務省「サービス産業動向調査」が開始されるまでは、GDPの約7割を占めるサービス業で月次・四半期のデータが利用できない産業について、GDPの四半期計数は毎月勤労統計のデータを使用して推計していた。その対象は少なくないので、GDP速報値の公表に反応する株式・為替市場の動向にも多少は悪戯(いたずら)していた可能性は否めない。

代替指標を活用した再推計が必要

 2004年~2011年の再集計値を算出するためには、2007年1月調査における対象事業所の入替えに伴って生じる断層の修正、07年の日本標準産業分類の改定を受けて、10年に産業分類の変更を行った際の抽出率の調整、母集団を構成する雇用保険適用事業所に関する新設と消滅の調整が必要である。だが、今のところ、これらの作業を行うための資料は廃棄処分等によっていずれも見当たらないとされており、再推計を行えない状況にある。

 しかしながら、政策の効果を判断するときには過去との比較が必要であり、それは保存された正確な統計を有効に活用することによって可能となる。動向を把握する動態統計は時系列で継続して利用することに価値があり、何らかの代替指標などを活用して再推計を行う努力が強く求められる。

 また、2012年~2017年の再推計値についても、復元に際して、あらためて母集団の分布に関する情報の手がかりを入手し、それをもとに、より有効な推定手法の適用を検討し、誤差の評価を行うことが望まれる。そのためには、毎月勤労統計調査の実務に精通している者と標本設計の理論に詳しい統計専門家との共同作業が必須である。

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筆者

舟岡史雄

舟岡史雄(ふなおか・ふみお) 信州大学名誉教授

1947年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士過程終了。2012年、信州大学経済学部教授を定年退職。日本統計協会専務理事、政府の統計審議会委員、統計委員会委員などを歴任。著書に『社会・経済の統計学』『家族・世帯の変容と生活保障』など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです