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県民投票を二択から三択に変えた政治家の責務

沖縄県の大学生を対象にした「実験的調査」が示した選択肢のからくり

久保慶明 琉球大学人文社会学部准教授(政治学)

県民投票改正案が県議会で採択された後、会見する玉城デニー沖縄県知事(左)=2019年1月29日、那覇市 
拡大県民投票改正案が県議会で採択された後、会見する玉城デニー沖縄県知事(左)=2019年1月29日、那覇市

県民投票をめぐる様々な論点

 2019年沖縄県民投票(2月24日実施)は、沖縄県議会で 2018年10月26日に可決された辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例(以下、県民投票条例)、ならびに2019年1月29日に可決された辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例の一部を改正する条例(条例第1号)(以下、改正条例)のもとで実施される。

 今回の県民投票には様々な論点がある。

 たとえば、辺野古埋立てに関する権限をもつのは沖縄県知事であり、沖縄県民ではない。選択の対象を沖縄県知事の権限に限定しても、県民投票の結果が法的拘束力を持つことはない。そのような県民投票にいかなる意義があるのだろうか。あるいは、一部の市が県民投票の事務処理に関する予算を支出しない方針をとったことを受けて、当初二択であった選択肢が三択になった。正規の手続を経た県議会の決定を市町村が覆すことが認められるのか。これらの論点は、どれも県民投票の根幹にかかわるものである。

 ただし、本稿ではこれらの是非そのものを論じることはしない。そうではなく、県民投票条例の制定および改正のプロセスに注目してみたい。有権者から直接請求された県民投票条例の実施を選択したのは、沖縄県の政治家である。県民投票による有権者の選択に先駆けて、沖縄県の政治家が今回、どのような選択をしたのかを整理しておく必要がある。

政治参加は個人の権利だが……

 政治について自由に語り、政治に参加することは、現代を生きる一人ひとりがもつ権利である。日本国憲法も、集会・結社・表現の自由(第21条第1項)、選挙権(第15条第1項)、被選挙権(第44条)といった、政治に関する権利を定めている。憲法による保障のもとで、有権者は政治に参加し、政治家は選挙に立候補する。

 とはいえ、これらの権利は憲法を制定するだけでは実現されない。選挙を例に考えてみたい。

 第一に、選挙は具体的な制度構築を必要とする。投票や立候補は、公職選挙法など関連法令を国が整備し、その実務を自治体の選挙管理委員会が担うことによって初めて可能になる。第二に、選択肢が存在しなければ有権者は投票することができない。たとえば、都道府県知事や市区町村長の選挙において、立候補者が一人しかいない場合、有権者は投票することができない。

 このように、具体的な制度構築や選択肢のあり方は、政治に関する権利の実現を左右する。住民投票も同じである。

 たとえば、地方自治法第74条が定める直接請求制度に基づいて住民投票条例の制定が請求された場合、条例を議会に提案するのは都道府県知事や市区町村長であり、審議するのは都道府県議会や市区町村議会である。請求された条例をそのまま可決するか、修正して可決するか、否決するかは、政治家の判断に委ねられている。言い換えれば、政治家は判断の理由を住民に対して説明する政治的な責務を負っている。

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筆者

久保慶明

久保慶明(くぼ・よしあき) 琉球大学人文社会学部准教授(政治学)

1983年、栃木県生まれ。中央大学法学部卒業。筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(政治学)。日本学術振興会特別研究員(DC2、PD)、筑波大学人文社会系助教などを経て、現職。専門は、政治過程論、地方自治論、公共政策学。共著に『ローカル・ガバナンス』(木鐸社)、『政治変動期の圧力団体』(有斐閣)など。