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県民投票を二択から三択に変えた政治家の責務

沖縄県の大学生を対象にした「実験的調査」が示した選択肢のからくり

久保慶明 琉球大学人文社会学部准教授(政治学)

県民投票条例と改正条例はどう制定されたか

 2019年の沖縄県民投票条例は、地方自治法第74条が定める直接請求制度に基づいて請求されたものである。沖縄県ウェブサイトの県民投票条例制定までの経緯によれば、署名は2018年5月23日から7月23日までの2カ月間に集められた。9月5日には9万2848筆の署名簿と条例制定請求書が、知事職務代理者である副知事に提出された。

 9月20日(注:2018年沖縄県知事選の10日前)、知事職務代理者である副知事は「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」案を議会に提出した。10月24日、県議会の米軍基地関係特別委員会が県民投票条例案を可決し、総務企画委員会が一般会計補正予算案を可決した。2日後の10月26日の本会議で県民投票条例案は可決された。

 県民投票条例第13条は「……知事の事務のうち、投票資格者名簿の調製、投票及び開票の実施その他の規則で定めるものは、地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の17の2の規定により、市町村が処理すること」と定めている。この事務を市町村が処理する際は、県が支出する経費を市町村として支出することになる。

 しかし、県内41市町村のうち5市が支出しない方針をとった。理由の一つは、選択肢が「賛成」「反対」しかないことであった。県議会は選択肢を「どちらでもない」を加えた三択とする改正条例案を可決し、支出しない方針をとっていた5市は予算支出を決めた。

県民投票条例の改正案を賛成多数で可決した沖縄県議会=2019年1月29日、那覇市 
拡大県民投票条例の改正案を賛成多数で可決した沖縄県議会=2019年1月29日、那覇市
 もともと10月の県民投票条例審議時には、原案の「賛成」「反対」二択に対して、「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた四択案が、沖縄・自民党と公明党から提案されていた。沖縄県議会ウェブサイトの議案等に対する議員の賛否の状況(10月26日議決分) によれば、二択の県民投票条例案(委員会修正案、修正部分を除く原案)に賛成したのは、社民・社大・結連合11名、おきなわ8名、日本共産党6名、無所属1名の計26名だけであった。

 それに対して改正条例案の審議では、議案等に対する議員の賛否の状況(1月29日議決分)によれば、10月に賛成した26名に加えて、公明党(4名)と維新の会(2名)の全員と、沖縄・自民党の4名が賛成した。全会一致とはならなかったものの、「どちらでもない」という選択肢を加えることによって、10月よりも多くの議員が賛成し、全県実施が可能となった。

 選択肢が「賛成」「反対」の二択から、「どちらでもない」を加えた三択に変わったことに対しては、様々な意見があるだろう。本稿で注目したいのは、選択肢の提示方法が有権者の選択に及ぼす影響である。筆者がおこなった調査の結果をもとに考えていきたい。

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筆者

久保慶明

久保慶明(くぼ・よしあき) 琉球大学人文社会学部准教授(政治学)

1983年、栃木県生まれ。中央大学法学部卒業。筑波大学大学院人文社会科学研究科修了。博士(政治学)。日本学術振興会特別研究員(DC2、PD)、筑波大学人文社会系助教などを経て、現職。専門は、政治過程論、地方自治論、公共政策学。共著に『ローカル・ガバナンス』(木鐸社)、『政治変動期の圧力団体』(有斐閣)など。