官僚に過剰に忖度させる現政権の体質を引き続き厳しく追及していく
2019年02月13日
2月12日、再び衆議院予算委員会で質疑に立ちました。
前回の質疑ではあまりに多くの反響をいただき、本当に感謝と感動でいっぱいです(「統計不正を国会で糺す!本丸は「GDP」だ!!」参照)。
私も実は長い間、「絶望」と闘っていました。こんな政治でいいのか。こんな政治家の姿勢でいいのか。こんな社会の風潮を許すなら、一体私たちは子どもたちに、何といって顔向けできるのか。
そんな私の絶望とも渇望とも言える思いに、多くの有権者の皆様が、善意で応えてくださった今回の経験は、今後の私自身の取り組みにとって、最大の励ましとなりました。本当にありがとうございました。
いただいたお電話や、メールやSNS等のメッセージは700件以上、皆様が投稿してくださった質疑動画の視聴回数は全て合せると10万回とも20万回とも。
本当に勇気づけられました。ありがとうございました。
さて、今回も、引き続き統計不正の問題についてです。
今日は、党の方針もあり、まずはこの統計不正に深く関わったと疑われる厚生労働省の大西前統括官を参考人として招致しました。
この原稿では、一連の経緯に鑑み、これだけの社会問題になった以上、あえて実名で議論させていただくことをお許しいただきたいと思います。
厚労省の監察委員会中間報告を見る限り、この問題は2003年頃のシステム改修のミスにより、始まったものと思われます。しかしその後、何代にもわたってミスの存在が放置され、隠し通されてきたわけです。
しかし、過去に何度かこのミスを正すチャンスがあったことがわかります。1回目は2017年の冬、当時担当の石原統計室長が、当時上司であった酒光統括官に、統計不正の存在を告白したことでした。
ただ、この不正告白のきっかけが一体何だったのか、報告書を見ても分かりません。
改めて委員会への元石原統計室長の参考人招致を求めたいと思います。またこの時、酒光元統括官はこの不正を糺すよう、石原室長に指示しています。しかし、残念ながらその後フォローすることはなく、そのまま不正は続いていくのです。
そして、この酒光統括官の後任として、2018年7月に着任したのが、今回の参考人、大西前統括官でした。大西氏に聞いたところ、着任時に酒光さんから、具体的な引き継ぎは受けていないとの証言がありました。だとすれば、酒光氏は意図的に事態の隠蔽を企図したか、もしくは、極めて危機管理能力が欠如していたか、そのいずれかということになります。
酒光さんについてもやはり国会招致が必要です。
大西前統括官は、着任の翌2018年8月には、統計委員会に対して、賃金数値が上振れしたことの説明を求められ、不正を隠蔽したまま嘘の説明をしてしまいます。この時点で、当時の部下である、野地統計室長から、真相の説明を受けておらず、分からなかったというのです。結果として、大西氏は部下の野地氏に騙されていたということになり、組織体制や文化が一体どうなっていたのか、理解に苦しみます。
監察委員会の中間報告によれば、この隠蔽やウソの説明は、意図的・組織的なものではなかったとの結論になっていますが、それで本当にすむのか、さらなる追及が求められます。
しかし、大西氏の答弁ぶりを見る限り、どこにでもおられる善良な、普通の霞が関官僚であり、その意味では私にとっても先輩であり、まさに「悪事」は「悪人の確信」によってなされるものというより、ごく普通の人間の、「不作為と無責任」が連続することによって蓄積する。そして、その背景には、判断力や正義感の欠如という問題に加えて、やはり保身がある。そして、保身には、個人的保身と、組織的保身がある。そう思えてならないのです。
大西前統括官は、賃金構造統計の不正調査についても、総務省の一斉点検に「特に問題なし」という、虚偽の報告を許しています。さらに言えば、不正を覆い隠すために、こっそり調査方法をルールの「訪問調査」から、実態の「郵送調査」に、逆に切り替えるよう総務省にひそかに変更承認をしようとした疑いがあります。
結局、一連の経緯の中で、誰もが事の重大性に気づくチャンスがあり、また不正を糺すチャンスがあったはずなのに、まるでポテンヒットのように無責任と不作為が繰り返され、最終的にはデータの再計算、国民への追加給付、予算案の作り直しという、考えうる限り最悪の過程を辿るのです。
ただ、いずれにしても、最大のキーマンたる酒光元統括官と、石原、野地元統計室長の3名の国会招致は、必須であり、未だ実現していません。厚労省の内部調査には、厳正な結果を期待できない以上、3名の早期の国会招致が必要です。
もう一つ、外せないのはやはり、政治の動きです。
前回の質疑で、2015年10月の麻生財務大臣の経済財政諮問会議における発言を取り上げました。勤労統計を名指ししての批判でした。
しかしこの前の月、2015年9月には既に、厚生労働省は勤労統計研究会を立ち上げ、「調査方法の変更はしなくて良い」との結論を出していたのです。
ということは、この研究会が始まった2015年6月以前に、特筆すべき何らかのきっかけがあったことになります。当時の賃金数値の下振れが公表されたのは2015年4月ですから、この2015年4月から研究会が立ち上がった2015年6月までが、大きな転換点であり、何らかのきっかけがあったということになります。
ちょうどこの頃、厚生労働省から事態の説明を受けた菅官房長官が、この数字の下振れに「激怒した」という報道がありました。国会でこの点について質したところ、菅長官は「激怒」は認めなったものの、厚労省から説明を受けたことは否定しませんでした。
内閣人事局の創設以来、霞が関数万人の人事権を事実上、全権掌握した史上初の官房長官ということになります。ある意味戦後最大の実力者、権力者となったと言っても過言ではありません。
とするならば、「激怒した」、かどうかにかかわらず、そこでどのような反応が示されたのか。それを官僚が過剰に忖度するに十分な反応だったのではないか。この点が重要になって来ます。
繰り返しますが、この政権は「公文書を書き換えさせた」政権です。現政権の体質がすでに明らかになっている以上、この点は厳しく問うて、問い過ぎることはありません。
さらに、勤労統計の矛盾の中身についても取り上げました。
今回は「日雇い労働者」を調査対象から外した点についてです。全国に30万人とも60万人とも言われる日雇い労働者は、これまでは勤労統計の調査対象に含まれていたのです。
しかし2018年1月の調査から突然定義が変わり、この調査対象から日雇い労働者が除外されることになりました。これにより調査にどのような「段差」が生まれるのか、それをどのように検証し説明するのか、統計委員会における議論の最大の争点でした。
当時、厚生労働省の担当者だった石原統計室長は「あらゆる手段を尽くして検証する」、「説明できる状況を作ることに努力する」と答弁し、統計委員が示した懸念を振り切っています。
であるならば、実際に定義が変わり2018年の賃金が異常に伸びた以上、改めて厚生労働省はその点の説明責任を果たさなければなりません。この点、根本厚生労働大臣も、安倍総理大臣も、必ずしも積極的と言えない答弁を繰り返しており、この矛盾から逃れようとしているように見えます。
綺麗に飾られた数字ではなく、社会の厳しい現実の中で働く国民生活の実相に迫りたい、その気迫や熱意が伝わって来ないのです。
同時に、あれだけ統計委員会で慎重意見があったにもかかわらず、その場しのぎで、後の検証を約束するようなやり方は、自ら吐いた言葉への責任感覚という意味で、政府の信頼を失墜させるものです。
私が独自に試算したところ、この日雇い労働者を除いた影響は最大で前年比にして0.5%程度、金額にして1500円程度、平均賃金を押し上げた疑いがあります。逆に言えば、厚労省が公表した公式数値よりも、実際は相当賃金が低くなっている可能性があるのです。
場合によっては 2018年の実質賃金は、現在発表されているプラス0.2%からマイナス0.3%へ、0.5%も下方修正しなければならない可能性だってあるのです。
このような疑いのある経済実態の中で、詳しく検証もせずに、また躊躇せず、今年、消費税を引き上げるという政治判断に傾くべきなのでしょうか。
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