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「嵐は民主主義」で決まった活動休止

個人を尊重しつつ、みんなが納得できる結論に至るプロセスから見えてくるもの

内山宙 弁護士

嵐のルールは民主主義

 記者会見の中で印象的だったのは、「誰か一人の思いで嵐の将来を決めるのは難しい」という一方で、「他の何人かの思いで一人の人生を縛ることもできない」という言葉でした。

 これとの関連で思い出すのは、以前、嵐のメンバーの二宮和也さんが、「嵐は民主主義。Aと Bの選択肢があった時に、A2人対B3人になったら、Aを選んだ2人もBに乗っかる」と言っていたことです。誰か権力者がこうしろと言って、他のメンバーが従うのではなく、話し合いをしたうえで、多数になった意見にみんなが従っていくのですから、まさに民主主義ですね。

個人を尊重し、単純な多数決では決めない

多数決( iQoncept/shutterstock)拡大多数決( iQoncept/shutterstock)
 しかし、民主主義というのなら、大野さんが他の4人に従って我慢して続けるという選択にならなかったのはどうしてでしょうか。もし単純に多数決で決めていたら、今回の決定にはなっていなかったと思います。「辞めたい大野さん1人」対「続けたい他の4人のメンバー」というわけですから。そして、単純多数決に基づき、4人の考えに従うことになると、大野さんは辞められないか、他の4人だけで嵐を続けるという結論になっていた可能性があります。でも、それは最良の結論でしょうか。

 さきほど述べたように、会見では「他の何人かの思いで一人の人生を縛ることもできない」という言葉も出ました。二宮さんも以前、「一人がやりたくないことは絶対にやらない。一人がやりたくないって言ったものは、いまだにやっていない」と話していました。民主主義だからと言っても、誰かがツラくなるような選択はしない。すなわち、大野さんが嵐をやりたくない気持ちになっているのに、無理やり続けさせるという選択はしない。そういうことなのでしょう。

 もし、大野さんの気持ちを押しつぶして、嵐を続けたい他の4人が大野さんを従わせていたら、いつか大野さんの気持ちが擦り切れて脱退したり、けんか別れになって分裂したりしていたかもしれません。そうならず、4人が大野さんの気持ちと向き合って、共通の結論を出したことは良かったと思います。このような進め方と結論は、嵐の魅力の一つである仲の良さをアピールすることにもなり、ある意味、ファンの期待を裏切らない形となりました。

 一方、大野さんが抜けて4人で嵐を続ける選択をしなかった理由は、これも記者会見で語られた、「5人じゃなきゃ嵐じゃない」「5人でなきゃ100%のパフォーマンスはできない」という言葉から分かります。

 このように、今回、嵐の5人のメンバーは、個人の気持ちを尊重しながら、みんなの納得できる結論を一年かけて探していったという点で、実に成熟した民主主義を実践したと思います。

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筆者

内山宙

内山宙(うちやま・ひろし) 弁護士

1974年、愛知県生まれ。中央大学法学部卒、成蹊大学法科大学院修了。裁判所勤務の傍ら夜間の法科大学院に通い、2007年司法試験合格。08年弁護士登録(静岡県弁護士会)。静岡県弁護士会・憲法委員会委員、日弁連・法科大学院センター委員。エンタメ作品を題材とした憲法の講演を多数回開催している。著書に『これでわかった!超訳特定秘密保護法』(岩波書店・共著)、小説『未来ダイアリー もしも、自民党改憲草案が実現したら?』(金曜日)などがある。

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