メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ふるさと納税 泉佐野市の乱

全国トップ135億円。破綻寸前から復活。泉佐野市に共感が集まることはなかろうが…

市川速水 朝日新聞編集委員

全国トップの135億円、破綻寸前から復活した泉佐野市

 2008年に導入されたふるさと納税は、かつて育った地方や、自分の思い入れのある場所へ寄付すれば、一定割合で所得税・住民税から控除される制度だ。寄付文化を根付かせることを目的としつつ寄付する側も損をしないという、画期的なものだった。

 「住んでいる場所のサービスの対価として住民税を払う」という常識を覆す、税制度の連続性・秩序にこだわる日本の行政としても大胆な発想だった。人口の大都市集中と、その反作用で痩せ細る地方財政の一助になる、と当時の総務相、菅・現官房長官が率先して推進したものだった。

 制度が始まった2008年の実績は利用者3万人、寄付総額72.5億円だったのが、2017年は296万人、寄付額3482億円まで膨らんだ。所得税・住民税の控除額は2448億円に上った。対前年比でそれぞれ1.3倍という高い伸び率は、ふるさと納税の認知度の高まりと定着を示している。

 寄付額に対する返礼品の額は「還元率」と呼ばれ、専門のサイトも多い。たとえば1万円寄付して3000円分の米がもらえるとすれば還元率3割となる。牛肉、魚介類、家電など分野別に自治体の高還元率ランキングが並ぶサイトも人気だ。

 そのなかで泉佐野市がにらまれた理由は二つある。高還元率が目立つこと。しかも、地場産品ではない「商品」を多く扱っている点だ。

拡大大阪府泉佐野市のふるさと納税直営サイト

 ビールはアサヒ、キリン、サントリー、クラフトビールも取りそろえる。たとえば1万円の寄付で350㍉リットル缶1ケース(24本)が返礼品として送られてくる。地元・関西国際空港を拠点とするピーチ・アビエーションを利用できるポイントも用意した。返礼品は1000種類を超す。その結果、泉佐野市は2017年度、全国トップの135億円の寄付を集めた。

 ふるさと納税と泉佐野市の歩みを重ね合わせた時、今回の騒動は起こるべくして起きたものともいえる。泉佐野市は、ふるさと納税のおかげで破綻寸前から息を吹き返したからだ。

 関西国際空港開港に伴う公共施設整備などが負担となり、泉佐野市は2008年度決算で、破綻寸前の「財政健全化団体」に指定される。その後、市の命名権を企業に売る「ネーミング・ライツ」を試みたり、犬の買い主から税金を取る「犬税」の導入を検討したりするなど、奇抜というか、切羽詰まった財政再建を試みたことがあった。その一つとして注目したのがふるさと納税の活用だった。

 最初は、地場の泉州タオルぐらいしか返礼品がなかったが、種類を拡大し、数十の自治体と「特産品相互取扱協定」を結んで、お互いの地場産品を紹介し合うシステムを作った。新潟県小千谷市や茨城県行方市などと全国的に交流を進めた。その結果、2013年度決算で健全化計画を達成した。人件費の抑制や遊休地売却などが主体だが、ふるさと納税も財政好転に貢献した項目に挙げられた。さらに「今後の財政の運営方針」でも、将来の収入確保の手段として「ふるさと応援寄付金制度の拡充」が明記された。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

市川速水

市川速水(いちかわ・はやみ) 朝日新聞編集委員

1960年生まれ。一橋大学法学部卒。東京社会部、香港返還(1997年)時の香港特派員。ソウル支局長時代は北朝鮮の核疑惑をめぐる6者協議を取材。中国総局長(北京)時代には習近平国家主席(当時副主席)と会見。2016年9月から現職。著書に「皇室報道」、対談集「朝日vs.産経 ソウル発」(いずれも朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

市川速水の記事

もっと見る