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異文化マネージメントから読み解くゴーン事件・下

日産の経営・ガバナンスが直面した異文化マネージメント力の問題とは

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

見え隠れするフランス流の深慮遠謀

パリ郊外にあるルノー本社=2018年11月20日、ブーローニュ・ビヤンクール拡大パリ郊外にあるルノー本社=2018年11月20日、ブーローニュ・ビヤンクール
 フランスへの日産の工場進出を発表した後の昨年11月8日、マクロン大統領を自社工場に案内し、握手をしたゴーン前会長の得意絶頂の姿は、それなりの花道を用意して、販売台数で世界トップのフランス自動車メーカーに見合った円滑な政権移譲を考えていたルノーには、あまりうれしくない光景だったかもしれない。ルノーは株主資本主義の権化となっていたゴーン前会長の延命だけは避けたかったはずだ。

 また、日産の取締役会において、数の上では日本人が過半数を占めていたにもかかわらず、解任決議が逮捕の後になったことで、ルノーとしてはそれを放置した日産のガバナンスを問題視し、その改善のために経営統合を進める強いリーダーシップを持つ会長を送り込むという選択も可能になる。

 いずれにせよ、両社の将来の交渉や力関係を考えれば、日産から先に動いてもらうことは歓迎だった。

 フランス流の深謀遠慮である。

参考になる幕末の幕府とフランスの関係

 日産とルノーの今回の行動を考えるにあたり、幕末の幕府とフランスの関係が参考になる。

 当時、薩長と激しい駆引きを展開する幕府に対し、フランスは表向き中立を維持しながらも、徳川家中心の政権維持とそのための戦闘を期待した。見立てとしては、必ずしもイメージが一致しないかもしれないが、日産の西川社長が徳川慶喜、表からは見えない日産の主要人物は幕臣、ゴーン前会長は西郷隆盛で、ルノーやフランス政府はロッシュ公使と当時のフランス政府である。

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筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

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