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自衛官の募集難は憲法改正で解消するのか?

自治体は自衛隊に非協力的ではない。募集を増やすために必要なことは別にある

米山隆一 前新潟県知事。弁護士・医学博士

直接情報提供しないことに法律上の問題なし

 まず、「法律的根拠」についてです。自衛官の募集に関しては、自衛隊法97条で以下の様に定められています。

自衛隊法
第97条(都道府県等が処理する事務)
(1)都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う。
(2)防衛大臣は、警察庁及び都道府県警察に対し、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部について協力を求めることができる。
(3)第一項の規定により都道府県知事及び市町村長の行う事務並びに前項の規定により都道府県警察の行う協力に要する経費は、国庫の負担とする。

 そして、(1)の「政令」として、自衛隊法施行令が以下の通り定めています。

自衛隊法施行令
第115 条(応募資格の調査及び受験票交付)
(1)市町村長は、前条の募集期間内にその管轄する区域現住所を有者から志願票提出があった市町村長は、その志願者が防衛省令で定める応募年齢に該当し、かつ法第38条第1項に規定する欠格事由該当しないかどうかを調査し、応募資格を有すると認めた者の志願票を受理ものとする。
(2)市町村長は、前項の志願票を受理したときこれ当該包括する都道府県区域担地方協力本部の地方長に送付し、これら者と試験期日及び場ついて協議の上、志願者に受験票を交付するものとする。
第119 条(広報宣伝)
都道府県知事及び市町村長は、自衛官又候補生の募集に関する広報宣伝を行うものとする。
第120条(報告又は資料の提出)
防衛大臣は、自衛官又自衛官候補生の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。

 この自衛隊法施行令第115条により、市町村は法律に従って自衛官への志願票を受理し、受験票を交付し、第119条により都道府県及び市町村は、自衛官募集の広報宣伝を行っています。これをやっていないという自治体を私は聞いたことがありません。

 一方で、自衛隊法施行令第120条は「必要な報告又は資料の提出を求める事が出来る」と定めていますので、何をどの様な形で提出するかは、基本自治体側の裁量に委ねられていることになります。従って、自治体ごとに情報提供の方法が違うのは至極当然といえます。

 そのうえで、防衛大臣(国)が「必要な報告又は資料の提出」として、市町村の有する住民基本台帳の情報の提出を求めてきた場合はどうするかです。次に出でくるのは、住民基本台帳法です。関連する条文は以下の通りです。

住民基本台帳法
第11条

(1)国又は地方公共団体の機関は、法令で定める事務の遂行のために必要である場合には、市町村長に対し、当該市町村が備える住民基本台帳のうち第七条第一号から第三号まで及び第七号に掲げる事項(同号に掲げる事項については、住所とする。以下この項において同じ。)に係る部分の写し(第六条第三項の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製することにより住民基本台帳を作成している市町村にあつては、当該住民基本台帳に記録されている事項のうち第七条第一号から第三号まで及び第七号に掲げる事項を記載した書類。以下この条、次条及び第五十条において「住民基本台帳の一部の写し」という。)を当該国又は地方公共団体の機関の職員で当該国又は地方公共団体の機関が指定するものに閲覧させることを請求することができる。

 複雑な文章ですが、かみ砕いて説明すると、この住民基本台帳法第11条により、国(自衛隊)は自治体に対し「必要な報告又は資料の提出」を求める事ができ、かつその内容として、住民基本台帳を「閲覧させることを請求することができる」ことが定められています。従ってここまではすべての自治体が応じる義務があるけれど、それ以上の直接の情報提供は、やはり地方自治体の判断にゆだねられた任意のものということになります。

 とすれば、地方自治体の現在の対応はまさしく法の定める通りであり、何ら問題ないということになります。

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筆者

米山隆一

米山隆一(よねやま・りゅういち) 前新潟県知事。弁護士・医学博士

1967年生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学系研究科単位取得退学 (2003年医学博士)。独立行政法人放射線医学総合研究所勤務 、ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院研究員、 東京大学先端科学技術研究センター医療政策人材養成講座特任講師、最高裁判所司法修習生、医療法人社団太陽会理事長などを経て、2016年に新潟県知事選に当選。18年4月までつとめる。2012年から弁護士法人おおたか総合法律事務所代表弁護士。

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