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田中均氏が米朝首脳会談を展望する

そろそろ「圧力」から「対話」へ。受け身の対応を繰り返せば日本は孤立する

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

北朝鮮が最も強く望む「経済制裁の緩和」

 従来米国や日本が主張してきた包括的で完全な核廃棄に向けて、すべての核関連施設の申告・査察・検証できる廃棄といった道筋をたどることが最善であることは間違いがない。しかし、段階的な核廃棄といえども、核の完全廃棄に向かう道筋に向けて段階的に廃棄ということだとすれば、拒否するには当たらない。

 トランプ大統領は非核化を急がないとあえて発言している。従っておそらく米国が考えるのは北朝鮮側の当面の行動(例えば寧辺のプルトニウム施設や大陸間弾道弾の廃棄)に対して、限定的で、将来北朝鮮がごまかせば撤回できる措置を考えるという事なのだろう。

 だとすれば直ちに朝鮮戦争の終戦宣言に至ることはない。終戦宣言は国連軍の解体や在韓米軍存在の是非などについて恒久的なインプリケーションを持たざるを得ないからだ。

 ただ、今後の協議の仕組みを決めることはあり得るのだろう。朝鮮戦争の当事者である南・北・米・中の4者で協議していくと喧伝されるが、国連軍の後方司令部は横田基地にあり、朝鮮半島の平和・安全のため日米安保体制が果たす役割を考えれば、日本も関与しなければならない。

拡大ホワイトハウスで会見するトランプ米大統領=2019年2月15日、ワシントン

 経済制裁の緩和は北朝鮮が最も強く望むところなのだろう。北朝鮮だけではない。韓国、中国、ロシアなどは各々異なる目的で制裁緩和を支持している。

 韓国の文在寅大統領は市民運動家の出身であり、南北融和を政治信条とし、その具体化のために南北間で経済協力を推進したいという思いは強い。現在準備が進んでいる開城(ケソン)工業団地の再開、金剛山観光の再開、南北鉄道連結等のプロジェクトは経済制裁の例外とされない限り実施できない。文在寅大統領は、実施の見通しをつけたうえで3月末にも金正恩委員長のソウル訪問を実現したいと考えていよう。

 中国は国内の格差是正のためにも北朝鮮に隣接した地域と一体で開発を進めたいと考えているようであり、例えば国境の町の丹東から平壌(ピョンヤン)への高速鉄道などの計画があるようだ。ロシアもシベリア鉄道の連結など関心を示している。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事館総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー。2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。著書に『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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