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[124]是枝裕和『第9条・戦争放棄「忘却」』

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

福島第一原発1、2号機の排気筒(中央)。左はがれき撤去作業中の1号機の原子炉建屋=2019年2月15日午後、福島県大熊町20190215福島第一原発1、2号機の排気筒(中央)。左はがれき撤去作業中の1号機の原子炉建屋=2019年2月15日

2月5日(火) 午前中「報道特集」の定例ミーティング。早稲田大学の採点作業。

 ベネズエラの政情不安、といっても、アメリカのトランプ政権の後押しを得た、国際的にはほとんど無名だったグアイド国会議長が「暫定大統領」に就任すると突然宣言し、「二人大統領」併存という異常事態が「現出」して(させられて)いるのだから、なかなか理解ができないのかもしれない。1日に日本記者クラブで、日系人でもあるセイコウ・イシカワ駐日ベネズエラ大使が記者会見して、暫定大統領には正統性がない旨発言したというが、日本国内のメディアの報じ方が「相当に危うい」との指摘を複数の友人からもらった。僕自身も、今、日本の国際報道がどこもかしこもおかしくなっているとの認識を共有しているので、耳を傾けた。南米については特に難しい。アメリカの「裏庭」への介入の歴史を少しでも知っている記者であれば、今回の動きにどこかしら既視感のようなものを感じているのではないかと思いきや、そうでもないらしい。

 新聞労連が、官房長官記者会見で、東京新聞の望月衣塑子記者に対する質問を制限したとして抗議声明を出した。望月さんの名前は出ておらず、特定記者とある。あれは本当に露骨だと思う。座視していていいはずがない。

2月6日(水) 朝から雨模様。わき腹痛し。スポーツクラブへ行き、入浴のみで体重をはかったところ、相当に体重が落ちていた。ああ、早く泳ぎたいものだ。「クレスコ」や「調査情報」「角川新書」などいくつかの原稿の校正を済ませて、次の作業にかかった。今週の前半ネタは、ケフィア・グループの出資法違反容疑の強制捜査でやるとのこと。僕は凡人なので、正直に言って、千葉県野田市の女児虐待の方に関心がいってしまっていたのだった。僕は、報道機関の「独自」ネタ重視の姿勢に警戒感というか用心する感覚を抱きすぎているのかもしれない。

 旭川の義母死去。93歳。家族葬でひっそりと弔うことになる。家人と話し合って、僕はあしたは予定通り、福島第一原発の取材に行くことにする。

2月7日(木) 常磐線の列車内は意外に混んでいた。ぼんやりと義母のことなどを考えていた。今回の取材は日本記者クラブの合同取材団によるものだ。結局、僕らの局は1名しか参加枠が認められず、僕一人で行くことになったのだった。福島第一原発構内にはもうかれこれ8回か9回か入っているが、毎回、いろいろな変化がある。代表カメラがムービー1社、スチール1社と決められていて、テレビ局取材としてはなかなかしんどいものがある。とにかく、あしたに備えて、体をよい状態に保っておくことだ。夜の10時にはベッドに入ったが、いろいろな思いがこころに去来して眠れず、旭川の家人と連絡をとる。

福島第一原発の構内へ

2月8日(金) 朝8時50分にホテルをチェックアウトして、バスで東京電力廃炉資料館へ。これまで1F取材というと、いつも広報の前面に出て来ていた人物H氏が東京本社に異動になったとかで新しい担当者のもとでの取材となった。何だか拍子抜けした。H氏は、非常に声が大きく、衝突がたまに起きるくらいに取材にいろいろと制限を要請してきていたが、ある意味で実に正直であけすけな性格の方だとお見受けしていた。ちょっとばかりさびしい。今回の取材はきわめて「事務的に」時間厳守で進んだが、バスの中での記者リポートが原則NGらしい。これはとても大きな後退である。

 バスから降車するポジションも大体去年と似たようなポイントだが、1号機から4号機を俯瞰できる高台は、地面がほとんどコンクリートで覆われ、軽装でヘルメット、マスクなしで大丈夫だと説明された。120マイクロシーベルト/時。あとは汚染水タンク群が並ぶ場所と4号機脇。去年のプレスツアーでバス車内でも非常に高い線量を記録した2号機と3号機の間の道路も

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