メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

小沢一郎が明かす民主党政権失敗の本質

(1)三度目の政権交代を目指して始動した小沢に、私はインタビューを重ねた

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長

真冬にコートを着用せずビールケースの上で

 2014年の総選挙の時には投票日前日の12月13日、その地元水沢での演説を聞きに行った。

 この年の7月には安倍内閣は集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更に踏み切り、10%への消費税増税を先送りすることを解散の大義名分に掲げて総選挙に打って出た。日本の憲法学者のほとんどが憲法違反と指摘し、解散の大義名分も極めて怪しいものだった。

 まさに小沢が生涯の使命とする日本政治の進運のための戦いの一日、それが2014年12月13日、容赦の無い寒風の吹きすさぶ東北の地方都市だった。

 岩手県奥州市水沢区の商業施設「水沢メイプル」前。真冬の東北地方に吹きつける北風はまるで錐のように身体に突き刺さってくる。厚いコートを着込んだ私自身あまりの寒さに耐えられず、水沢メイプルの正面出入り口を何度も出入りして一時の暖を求めざるをえなかった。

 しかし、ワンボックスカーから降り立った小沢は、コートひとつ羽織らず手袋もせずに、東京にいる時と同じいつものダークな色調のスーツ姿で、集まった数百人を相手にひとり一人と握手を始めた。農業従事者が多いのか作業服姿の高齢者が目立つ。寒空の下、小沢が立ち去るまで去っていく姿がない。

拡大ビールケースを積み上げた即席の台に上って演説する民主党の小沢一郎代表=2006年4月15日、千葉県野田市

 この日、小沢は花巻市と北上市で演説して、水沢が最後の3箇所目だった。「キリン」の文字が見える黄色いビールケースの上に立った小沢は素手にマイクを握り演説を始めた。ビールケースの上に立って演説を続けるスタイルは小沢の定番だ。

「お寒いところをこうして大勢お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。――皆さん、アベノミクス、安倍政権によって国民の皆さんに一体何がもたらされたでしょうか。一部の人たち、一部の大企業は株が上がり円が安くなって莫大な利益を上げております。しかし、その一方、円安によって物価は日に日に上がっていく。それに反して収入は減る一方、実質賃金がずっと下がり続けているんです」

 耳を傾けていた聴衆の中から「そうだ」の声が上がった。

 円安による輸出企業の収益増加と物価高による実質賃金低下は現在に続く安倍政権の経済政策の宿命的失政と言える。小沢は一言で政策失敗の本質を突いた。

「アベノミクスの結果は、本当に国民の皆さんの生活を苦しくさせる一方であります。こういうような国民の生活を無視した政治は本当の政治ではない。本当の政治というのは、日本人である以上、どこに住んでいても、どんな仕事に就いていても、安心して安定した生活を送ることができる、それを考えていく。これが本当の政治じゃないでしょうか」

 人々が集まる商業施設前と小沢とはバス通り一本で隔てられている。バスの走り抜ける姿で時々小沢の姿が見えなくなるが、二つ重ねたマイクを両手で持つ小沢は、演説の要点にさしかかると右手を挙げて言葉に力を込めた。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

佐藤章の記事

もっと見る