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矛盾に満ちた辺野古移設に示された沖縄の「ノー」

二つの住民投票から見えてくるチグハグな沖縄の防衛政策。政府に自覚はあるのか

山本章子 琉球大学准教授

南西配備の三つの問題点

 軍事的対抗によって敵に自国への攻撃を思いとどまらせる抑止には、大きく分けて二つの方法がある。一つは、敵に目的を達成させない程度に抵抗できる軍事力を持つ「拒否的抑止」。もう一つは、敵を完膚なきまでに叩きのめす軍事力を持って攻撃の意志をくじく「懲罰的抑止」だ。陸自の南西配備は前者にあたるが、次の三つの問題がある。

 第一に、説明会で住民から石垣が戦場になる可能性を問われた防衛局担当者が、「そういう事態が起きないようにするための陸自配備」だと答えたが、その理屈では米軍を配備して懲罰的抑止に近づけるほうが戦争の可能性を下げることになり、陸自である必要性がない。実は、陸自の南西配備は彼らの予算獲得という政治的側面が大きく、安全保障の観点からは説明できない。

 第二に、抑止力を高めることは他国との緊張を高め、かえって偶発的な戦争の可能性を高めるというのは、安全保障論の常識である。石垣住民の問いは杞憂(きゆう)ではない。だからこそ、世界最大の軍事力を持つ米国でさえ、抑止と外交を対として偶発的戦争の回避に努めている。二言目には抑止と言う日本政府は、それができているのだろうか。

 第三に、国民保護法では有事に国民を避難させるのは、自衛隊ではなく自治体の役割である。周囲を海に囲まれた小さな自治体にその能力や手段はあるのか。米軍の場合、朝鮮半島有事には米海兵隊が自国民の保護・避難にあたることになっている。2018年に陸自の中に創設された、日本版海兵隊と呼ばれる水陸機動団は、沖縄の離島ではなく長崎県佐世保市の相浦駐屯地に駐留しており、自国民の保護・避難任務は負っていない。

辺野古移設後も普天間は返還されない?

沖縄県民投票の結果を受け、記者の質問に答える安倍晋三首相=2019年2月25日午前7時29分、首相官邸拡大沖縄県民投票の結果を受け、記者の質問に答える安倍晋三首相=2019年2月25日午前7時29分、首相官邸
 このようにどこか危うい日本の安保政策だが、今回の沖縄県民投票でその是非が問われた辺野古沿岸の埋め立て工事もまた、矛盾に満ちた国策に他ならない。

 2月15日、県内4大学の学生22人と米軍普天間飛行場の中を見学した。県民投票の判断材料にしたいという学生の発案だった。海兵隊の代表者が「普天間飛行場と比べて辺野古の代替施設は滑走路が短い」と言った。学生が「代替移設は基地機能が低下するのか」と聞くと「その通り」。学生はすかさず「代替施設が完成しても辺野古に移らないのか」と迫る。答えは「機能が維持されることが確認できれば移る」だった。

 この海兵隊の言葉は正しい。1996年4月15日に発表された普天間返還合意の文言は次の通りだ。

「今後5~7年以内に十分な代替施設が完成した後、普天間飛行場を返還する。施設の移設を通じて、同飛行場の極めて重要な軍事上の機能及び能力は維持される」

 辺野古の軟弱地盤に杭7万6699本を打ち込む改良工事も含めた工事全体について、沖縄県は予算2兆5000億円、期間13年という独自の試算を出している。過去に例のない改良工事であり、そもそも実現可能かどうかも未知数だ。

 仮に膨大な費用と時間をかけて代替施設が完成しても、米側から十分な機能・能力を有していないと判断されればどうなるか? 普天間飛行場は返還されないのである。そのとき、「沖縄の負担軽減」「普天間の危険性除去・固定化回避」を唱えてきた日本政府は、どう説明するのだろうか。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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